勝ち残る企業を創る鍵、「黄金のループ」によれば、「経営者」の質が高まれば優れた「社員」を育てることができ、社員の質が高まれば彼らが生み出す「商品・サービス品質」が高まる。王道の商品・サービス品質の基本的考え方は、近江商人の「三方よし」の精神に通じる。
王道の商品も「三方よし」
「三方よし」は近江商人道を表す言葉として有名だが、改めてここで詳しく見ておこう。三方よしとは「売り手よし、買い手よし、世間よし」のことで、売り手、買い手、世間の三者がよしとなることを基本とする商売の心得のことである。
近江商人は、定期的に各地に出向いて商品を売って歩く商売をしていた。
各地を定期的に巡回するため、買い手であるお客さまの信用を損なうようなことはあってはならない。売り手である自分の儲けだけを考えては、二度とその地で商売ができなくなるからだ。これが売り手よし、買い手よしである。しかし、近江商人には長年培った信用があるといっても、行く先々の土地の人から見ればしょせん余所者である。余所者には冷たいのが人の常である。たとえ故意にではなくとも、土地の人たちの商売を荒らしては、侵入者という烙印を押されてしまい二度とその地に足を踏み入れることはできない。
そこで、行く先々の土地の人にとってもよいように、地域の経済活動にも貢献するようにという思いのもとに、世間よしという一項目が成り立ったのだという。今日では、この近江商人の「三方よし」は、製造物責任(PL)、CSR(企業の社会的責任)、コンプライアンス(法令遵守)など、社会の公器である企業の経営規範として再注目されている。
そう考えてみると、アメリカから輸入したCSとは近江商人道の「三方よし」と何の変わりもない。輸入品だからといって涙を流してありがたがる理由はまったくない。