今年の夏、「節電」が重大ミッションとなっている日本の産業界。各企業では、プロジェクトチームを結成し、対策に躍起になっているところも少なくない。冷房など空調設備を控え目にする企業が大半であるため、オフィス内や通勤、営業回りなどの際の暑さ対策は、ビジネスマンやOLにとってこの夏を乗り切るための生命線だ。
そんな今、ポロシャツを仕事仕様にアレンジした「ビズポロ」が人気だ。ポロシャツといえば春~夏の定番アイテムであるが、仕事仕様にするために、ネクタイも似合うようにエリの仕立てにこだわり、鹿の子編みで通気性や伸縮性にも富んだ優れモノだ。
たとえば新宿高島屋では、5月24日まで夏のビジネススタイルフェアを開催した。ここでは、2011年の「節電ビズスタイル」に最適な旬のスタイルを提案している。ビズポロとニットタイ、あるいはビズポロとウォッシャブルパンツなどの組み合わせで、涼感溢れるスタイルを表現した。
また、ポロシャツの代名詞とも言える仏衣料メーカー「ラコステ」では、GW後半のビズポロの売り上げ(1万3650~1万6800円)が前年比40%もアップ。メーカーズシャツ鎌倉では、より細い糸で滑らかな肌触りを実現し、前年比2倍の販売を見込んでいる。
このビズポロが注目を集め出したのは、昨年頃から。前出の新宿高島屋でも、2010年初夏に「おすすめクールビススタイル」と銘打って、ビズポロを紹介している。もともとそんな潮流があった上に、今年は折からの節電対策が追い風となった格好だ。
その一方で、「ポロシャツがビジネスシーンに完全に浸透するには、時間がかかるのでは?」という声もある。ラコステを愛好する筆者の仕事仲間(27歳)によれば、「たとえば広告マンなど、一部のおしゃれビジネスマンを除いては、仕事の場でのポロシャツにはなかなか手を出しにくい」という見解だ。IT企業である彼の職場は、公式の場、たとえば客先などへポロシャツで向かうことは、「文化として根付かない」という。まだまだ「クールビズはお客様に対して失礼」という不文律が、一部では根強いようだ。
つまり、節電やエコなどに関係なく、ビジネスシーンでの装いのハードルは、その業界や企業が持つ独特の文化に左右されるということか。いずれにせよ、最もカタイとされるお役所や金融機関にまでクールビズが定着して久しい昨今、日本のビジネス界全体が軽装化するのは、歓迎されるべきではないだろうか。
(田島 薫/5時から作家塾(R))