なぜこれだけのことが5日間でできるのか?

 たった5日間で本当にできるのかというような内容だが、5日間でやるからこそ意味があり、また、できるように作られたメソッドなのである。

 なぜ短期間でできるかというポイントはいくつかある。

 まずは、最初の段階の「問題を洗い出す」ことに時間をかける。たった5日間しかないことを思うと早くソリューションを考える段階に進みたくなるが、ここで目標をきちんと定めておくことで、その後のスピードがまったく変わってくるという。急がば回れ、である。

 また、ソリューションを考える段階では、それぞれ個別に考え、アイデアを持ち寄る手法が取られる。チームでプロジェクトを動かしていると、皆でブレーンストーミングをするほうがいいと思われがちだが、実際、個人でアイデア出しをするほうが質・量ともに優れた結果を生み出せることが、1958年にイェール大学で行なわれた研究結果でわかっている。

 ひとりで作業することで、じっくりとものごとを調べ、ひらめきを得る時間が持て、問題を考え抜くことができるからだという。

 また、個別に取り組むことで、プレッシャーと責任感から、おのずとベストな仕事をするよう駆り立てられるということもある。そうすることで、通常のブレーンストーミングにありがちな集団思考に陥らず、最強のソリューションを選択することができる。

プロトタイプ思考をもつことが重要

 また、たった1日でプロトタイプを作るには、完璧さを追求しない「プロトタイプ思考」を持つことが重要だという。

 ユーザーテストに必要なのは一時的なシミュレーションだ。莫大なコストや時間をかけてアイデアを形にする前に、ユーザーテストに必要な部分のみを制作し、ユーザーの反応を見て、自分たちが進むべき方向を最短の時間で知ることが大切なのだ。

 プロトタイプをテストしてもらうユーザーはたった5人でいい。

 かつてユーザーリサーチの第一人者が数千人のユーザーをインタビューし、最も重要なパターンを見抜くには何回インタビューすればいいかを調べたところ、問題の85%がたった5人のインタビューで発見されていた、という結果が出たというのだ。

 つまり、同じ調査でテストする人数を5人より増やしても、追加のメリットはほとんどなく、残り15%の問題を発見するために多大な時間を費やすより、発見された85%の問題の改善をしてからふたたびテストを行なうほうが理にかなっている、ということである。