調べてみると、この会社の人事制度は「売上」だけで評価される計算式になっていて、顧客からクレームが入ると、その人の評価は下がるという仕組みになっていたのです。

 つまり、部下はクレームの数で判断されるのに、上司は「売上」だけで評価が決まるので、いくらクレームがあっても「売上」さえ立っていれば、上司だけは高い評価を得られるというわけです。

 部下の評価は軒並み低くて、上司だけが高いなんて、あまりにもおかしな話です。

 売上「だけ」を評価基準にしてしまうと、このような事態が起こり得るのです。

成果主義は定性的評価を含めた
さまざまな評価軸の1つ

 成果主義の問題点が浮き彫りになった有名な例といえば、富士通や三井物産です。

 たとえば三井物産では、1999年に徹底した成果主義を導入しました。しかし2002年~2004年にかけて、立て続けに大きな不祥事を引き起こします。

 短期的な成果・結果主義が引き起こした事案でした。もともと三井物産は、マニュアル化できないノウハウを先輩から後輩へ伝え育てる「人の三井」といわれ、それが強みでしたが、個人成果偏重の制度を導入してから、「業務知識や人脈を人に教えると損」などといい出す社員が出てしまい、「人の三井」の強みを急速に失わせてしまったのです。

 結局、同社では2006年に、チームワークや価値観の共有、人材育成といった定性的な行動を重視する制度に改めたのです。

 この事例にも象徴されるように、成果は重要な評価基準の1つですが、チームワークや人材育成、変革力など、“さまざまな評価軸のうちの1つ”と考えたほうがいいでしょう。

 企業は人なりです。結果や短期的な成果だけではなく、今すぐには儲けにつながらなくても、試験的、実験的、種まき的なチャレンジも評価される制度を築いてこそ、最も大事な資産である「人」が育ちます。やはり人事制度は、成果だけに特化しない、公正で「人を育てる仕組み」にすることが、社員にとっても、会社にとっても、幸せな結果を招くことになります。