ダイヤモンド社との奇妙な縁?

——出版社もジャンルも多岐に渡っていますが、持ち込みの成果ですか?

 それもありますが、ありがたいことに「『〇〇』という本を見て」という形での依頼をいただくことが多いですね。また、編集者の方は同業転職をされることが多くて、会社が変わりながら、さらに社内の人をご紹介してもらったりと。そうそう、ダイヤモンド社さんとの関係はちょっと変わっています。

——ぜひ聞かせてください。

 最初にお仕事をいただいた出版社にいた方が、その後別の会社に転職されました。はじめの会社は文芸系だったんですが、次の会社はまったく違って。ビジネス書をつくることになって、僕にとってもビジネス書ジャンルにかかわる最初の体験でした。そうしてつくったものが立て続けにヒットして、ビジネス書の版元さんからも声がかかるようになりました。そんな中、きっかけをつくってくれた編集者さんからこういうオファーをいただいたんです。

「次の本はドラッカーの推薦がある翻訳本で、帯に大きく“ドラッカー絶賛!”と入れられる、いや入れたい本なので、『ドラッカー本をたくさん出しているダイヤモンド社っぽく、かつダイヤモンド社がしない感じ』にしましょう」

 いや、わかるようなわからないような指示なんですけど(笑)。つまり、「これは定番書なんだよ」と見せる意図ですね。そうこう言いながら出来上がったのが『なぜマネジメントなのか』という本です。編集者も僕もドラッカーの価値はそんなに理解していなかったと思います。でも、ダイヤモンド社に敬意を表しつつ、でもちょっと遊んでやろうと(笑)。タイトルの字間を極端に詰めて、少し圧迫感のある存在感を出してみたり。

——売れ行きはどうだったんでしょうか。

 売れはそこそこだったと聞いていますが、それよりも、この本のデザインを見てダイヤモンド社の編集者の方がお仕事を依頼してくれたんです。「こういうデザインで」と(笑)。それがきっかけで、ダイヤモンド社さんとのお仕事が始まりました。

 でも、話はそれで終わらなくて、『なぜマネジメントなのか』が出たのが2003年だと思うのですが、2007年に同書の編集者さんが、何を隠そうダイヤモンド社に転職されました(笑)。それでまた、ダイヤモンド社さんとの仕事も増えました。

——縁、というかなんというか…。今では弊社内でも何人かの編集者と仕事をしていただいていますね。今ここに松さんがデザインされた弊社の書籍の一部を並べさせていただきましたが、それぞれに個性があります。本の内容によってデザインのアイデアが異なるのはもちろん、担当者との仕事の進め方の違いによっても違ってくるものですか?

 そうですね。これまでに4,5名の方と仕事をさせていただいていますが、やはり進め方は様々ですね。「こういう色使いと文字置きで」とほとんどイメージを固めてこられる方もいますし、「原稿を読んでイメージしてください」という方もいます。どちらの場合でも、またそれ以外の場合でも、自分なりに考えた趣向の違うラフのデザインを複数出すようにしています。