そして、リーマンショック以降は、一時期の落ち込みを除いて考えても、横ばい傾向が顕著となっており、貿易規模の拡大という形のグローバル化は限界に達したかのごとくである。貿易拡大による太平洋地域の経済浮揚を目指したTPP(環太平洋パートナーシップ)協定がトランプ政権の誕生によって頓挫したことにも、その限界が現れたものといえよう。

カネのグローバル化は
急拡大と激しい変動が特徴

 3番目に、カネの国際移動である。カネは、決済、所得移転、貸借、証券投資、直接投資などに伴って移動するが、ここでは、まず海外事業を展開するための直接投資によって、どれだけ国境を越えてカネが動いたかの推移を追った(上図に併載)。

 対GDP比で見た直接投資規模(ネット、すなわち海外投資の純増額)は、1980年代半ばまでは0.5%水準であったが、日本ではバブル期に当たる1980年代後半から急拡大し、2000年には4.1%にまで達した。1997年から2000年頃にかけてのアジア通貨危機、ロシア財政危機、ITバブル崩壊などを経ていったん収縮したが、再度、2007年の5.4%まで急上昇した。

 ところが、2008~2009年にサブプライム住宅ローン危機、リーマンショック後の世界金融危機が世界経済を揺るがし、2009年には2.1%まで再度急落した。その後、2011年には2.9%まで回復した直接投資規模が、深刻化する欧州債務危機を背景に再度2014年には1.9%にまで落ち込んだ。

 貿易と直接投資の動きの推移を見比べると、リーマンショック後の世界金融危機は、それ以前の金融収縮と異なって、実物経済を大きく巻き込むようになった点が新しい事態といえる。

 グローバル化したカネの動きは、突如の過熱と急なクールダウンが特徴だが、ここで見てきた直接投資は企業の生産活動と結びついているだけに、まだ安定的な方である。商品・金融市場における相場取引においては、さらに変動が激しいといえよう。

 直接投資の規模の推移については、こうした変動要素を除いて見る限りほぼ横ばいに過ぎなくなっているようである。日本においては、東芝、日本郵政と海外企業の大型買収の失敗が相次いであらわになっているが、世界的に見ても直接投資の拡大による企業成長に限界が訪れていると解することが可能なのではなかろうか。

グローバル化の光と影がもたらす
先進国における国民意識の亀裂

 ヒト、モノ、カネのグローバル化の指標は、いずれも冷戦後の1990年代前半から、レベルがワンランク・アップしていることが確かめられた。それとともに、特にカネの動きの変動の激しさによって、ヒトやモノといった実物の動きが大きく左右されるようになったことがグローバル化のもう1つの側面であることが分かった。

 また、ヒト、モノ、カネのグローバルな移動量の拡大によって、社会や経済を発展させるパターンには、ヒト、モノ、カネのそれぞれにおいて限界が近づいている可能性が高いという点も見て取ることができた。自国第一主義を掲げる保護主義への回帰の動きが見られるとしたら、それは、歴史への反動というより、グローバル化がもたらすメリットが小さくなっているからに過ぎないからなのであろう。