私は、先週もずっと博士と一緒でした。今週末からニューヨークで開催されるTOC国際大会に出席できない博士の代わりにセミナーをすることになったゴールドラット・コンサルティングの幹部たちがイスラエルに集まり、博士の指導を受けていました。

 博士は、朝から晩まで、本当に精力的でした。朝10時から夜の9時まで議論し、夕食後もまた10時から議論したいと言い出された時にはとても驚きました。博士と話すと、頭をすごく使うので、みんな本当にヘトヘトに……。博士の体調のこともありますが、私たちの体力(脳力)がついていかず、翌日に持ち越すのを許してもらったほどでした。

 その内容は、「いかに偉大な人物の偉業から学ぶか」ということでした。科学は、偉大な人物の偉業から学び、その「巨人の肩の上に立って」進化していく――そのプロセスをつまびらかにしていき、私たちが、知識を今後も発展させていくことを可能にするロジックを教えてくれました。これが、彼の最後の教えとなりました。それは、シンプルに“Never say I know”(わかっているとは決して言わない)です。

「人はもともと善良である」
 「ものごとは、そもそもシンプルである」
 「あらゆる対立・矛盾にも、妥協のない解決策は存在する」

 この三つを信念に、博士はこれまで理論を築いてきました。そして、もう一つ、Never say I knowという大切な信念を語ったのです。この信念こそが、常に知識体系を進化させるエンジンとなっていくというものでした。

 死を意識したときに、自分の生活をまったく変える必要がない。それほどまでに充実していた自らの人生を実感し、改めていかに自分が幸せかを感じる。そんな人生を生きた博士。その偉大さに改めて感動した次第です。このような偉大な師匠を持つことができ、私は幸せでした。

 最後に、博士のご冥福をこころよりお祈りいたします。