全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!

地面に触れて寝る「アーシング」の驚異的なメリットとは

地面の電磁エネルギーが
「炎症」を解決する

人類は、誕生したときからずっと地面とつきあってきた。私たちの先祖は、毎日必ず地表と接していたはずだ。歩く、狩りをする、食料や水を集めにいく、歓談する、遊ぶ、リラックスする……。彼らの行動のほぼすべてが、地面と接することを必要とした。

ところが近代化が進んだ今日の世界では、何日、何週間、いやもっと長く、地表に接することなく暮らしている人がたくさんいる。家やオフィスに閉じこもり、テクノロジーを使うことに夢中で、テクノロジーの源となるものと触れあう時間が減っているのだ。もちろん、車に乗ろうとすれば、外へ出て車のところまで歩くことになるが、たいていは電気を通さないゴム底の靴を履いているので、身体が地球の一部に直接触れることはない。地面はもちろん、木に触れることも、体内の細胞を生みだす源に触れることもめったにない。

しかし、科学者によると、そうしたライフスタイルは私たちの健康に多大な影響を及ぼしているという。数々の研究により、地面の電磁エネルギーを通す性質は、人体に素晴らしいメリットをもたらすことが明らかになっている

気づいていないかもしれないが、人体は非常に電気を通しやすい。地面と同じように、電磁エネルギーが走っているのだ。神経系はいわば、身体全体に情報を伝達する導線だ。それに、私たちの身体はミネラルでできているし、細胞組織には水分が含まれている。つまり、人間は、歩いてしゃべって電気を通すバッテリーのようなものなのだ。

人間の身体は電気を通しやすいということはおわかりいただけたと思う。身体のありとあらゆる組織は電荷を帯びていて、そのおかげで機能できていることもたくさんある。たとえば炎症は、好中球と呼ばれる白血球の一種によって促進される自然な機能だ。好中球は、損傷している部分や必要な部位へフリーラジカル(活性酸素)を運ぶ。フリーラジカルはプラスの電荷を帯び、有害な細菌を死滅させ、損傷した細胞を分解して健康な細胞が入り込める隙間をつくるほか、組織の修復も行う。実にありがたい存在だ。

体内で生じる炎症は、本来慢性的なものではない。炎症が深刻な問題となるのは、フリーラジカルが暴走して関係のない周辺組織に飛び火して、健康な細胞が傷つけられたときだ。これが炎症の真の原因であり、ほとんどの人は、慢性的かつ日常的にこの問題と対峙している。

私たちが生きているというだけで、細胞は毎日損傷を受ける。損傷した細胞は、心臓、肝臓、筋肉など部位に関係なくすべて、フリーラジカルの酸化的破壊を受ける。これは、細胞の損傷によってプラスの電荷が発生し、それを中和しようとするためのごく基本的な化学反応である。

アーシングがもたらす驚異的なメリット

いま、健康や栄養に関して世間で大きく話題になっているのが抗酸化作用だ。抗酸化物質は自由電子をもっているので、フリーラジカルを中和して過剰な酸化を直ちに止めることができる炎症が軽減され、健康が増進されるというわけだ。

研究者のあいだでは、人体が地面に触れることを「アーシング(グラウンディング)」と呼ぶ。2013年に刊行された補完代替医療の専門誌『ジャーナル・オブ・オルタナティブ・アンド・コンプリメンタリー・メディスン』に、次のような研究成果が載っていた。

「アーシングすると赤血球の表面電荷が増大し、それによって血液の粘性と凝集が低下する。アーシングは、心血管系リスクや心血管系イベントを減らすうえで、もっとも容易でありながらもっとも重要な介入の一つだと思われる」

心臓専門医として名高く著作もあるスティーブン・シナトラは次のように語る。
アーシングによって炎症が軽減することは、赤外線の画像診断や、血液成分と白血球の数の測定によって実証されています。抗炎症効果が現れる理由を論理的に説明すると、身体が地面に触れることで、マイナスの電荷を帯びた抗酸化物質が地面から体内に侵入し、炎症が起きている部分に存在するフリーラジカルのプラスの電荷を中和するのです。地面から身体に電子が流れ込むことも実証されています」

地面に触れるという単純な行為にそれほどの力があるとは、確固としたデータがなければとても信じられなかったと思う。だが、せっかくその事実を知ったのだから、これを活用しない手はない。家のすぐ外にある、タダで使えて健康を増進してくれる源の恩恵にあずかるべきだ。

2004年に、眠っている身体がアーシングしたときの人体への影響を、コルチゾール量の測定および、睡眠、痛み、ストレスに関する被験者本人の報告にもとづいて調べる実験が実施された。

その実験から、眠っているあいだアーシングしていた被験者のコルチゾール量は減少し、日中の分泌量は正常だったことが明らかになった。ご存じのとおり、コルチゾールは睡眠にとって因縁の敵だ。コルチゾールの分泌が乱れれば、睡眠も乱れる。また、被験者の報告にも、アーシングしながら眠ったほうがよく眠れて、痛みやストレスも軽くなったとあった。

地面に触れる機会をつくることで、睡眠の質は劇的に改善できる。だからといって、毎晩キャンプをしろと言うつもりはない。いまではアーシングを体感できる素晴らしいテクノロジーがあるので、家にいながらにして毎晩アーシングの恩恵にあずかることができる。

定期的に地面に触れてプラスに傾いた体内を中和させることは絶対に必要だ。自由電子を体内に取り込めば、回復のスピードが増し、心臓は健康になり、ホルモンの働きを正常に保てるようになる。そしてもちろん、夜ぐっすりと眠れるようにもなる。