営業プロフェッショナルになるための基本スキル

 繰り返しになりますが、顧客主義に徹することは、顧客の言いなりになったり、太鼓持ちになったりすることではなく、顧客のビジネスに価値を提供することであり、それは、顧客が抱えている問題のみならず、顧客が気づいていない問題を解決することで実現します。当然ながら、少なくとも顧客と同等、望ましくはそれ以上の知識が必要です。こう申し上げると、必ず眉を曇らせる人がいますが、けっして理想論を押しつけているわけではありません。

 たとえば、たいていの営業部門には、「営業の達人」と呼ばれるベテランが一人や二人います。彼らは、大小取り混ぜ、さまざまな顧客と取引した経験があり、自社製品のみならずライバルの製品についても明るく、過去の成功事例や失敗事例など、まさしく「歩くデータベース」です。しかも、ビジネスに関する情報だけでなく、歴史、スポーツ、文化、芸術、ご当地情報など、なかなかの教養人であることも特徴です。

 これぞまさしく、営業プロフェッショナルと呼ぶに値する人材です。こういう人材は、稀少とはいえ、たしかに存在しているのです。

 ですが、彼らの知識や教養は、長い時間をかけて積み重ねた結果であり、また体系的なトレーニングというより、個人の努力の賜物です。いまや環境も異なれば、このようにゆっくり人材育成できるような時代ではありません。そして、このようなハイ・パフォーマーが大量に必要とされています。ですから、いまや同じやり方は状況が許しません。

 困ったことに、ビジネススクールのほとんどが営業について教えていません。せいぜいマーケティングの講義のなかで触れられる程度です。実際、営業を専門とする教授は皆無といえます。

 営業向けのトレーニングを提供している研修会社は星の数ほどあり、そのなかには「営業のプロ人材をつくる」といった触れ込みのところもありますが、そのカリキュラムを見る限り、営業プロフェッショナルではなく「営業スペシャリスト」の育成にとどまっており、そこには「営業は売ってナンボ」という暗黙の前提も見え隠れします。

 そういえば、プロフェッショナル・コンサルタント養成スクールなるものは存在しません。しかし、プロフェッショナル・コンサルタントは世界じゅうにたくさんいます。ですから、ビジネススクールをはじめ、営業プロフェッショナルを養成する機関がないからといって、営業プロフェッショナルをあきらめてはいけません。

「では、どうすれば、スキルを身につけることができるのか」

 ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院は、今秋、営業プロフェッショナル養成講座をスタートする予定です。ビジネススクールの教授陣が、現場の生情報の精度を上げるためのマーケティング・スキル、チーム力を高めるリーダーシップ・スキル、さらに営業部門の組織能力と営業マンの個人能力の両方を高める業績評価指標や人事制度、報酬体系など、顧客と同等、望ましくはそれ以上の知識を身につけるための専門講座を指導します。

 これは、時間とエネルギーを傾けるに値する挑戦です。営業マンのみなさん、真のプロフェッショナルを目指して、一緒にチャレンジしていこうではありませんか。

 

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