私たちの体の中には、「体内時計」と呼ばれる時間が備わっています。
この体内時計を動かす源にあるのが「時計遺伝子」(体内時計をつかさどる遺伝子群)で、私たち人間の体はこの遺伝子によって、目覚める、お腹が減る、眠くなる、などといった生きるための基本的なリズムを刻んでいます。人体の活動の多くは時計遺伝子によって支配されているといってもいいかもしれません。
この時計遺伝子の働きに基づいた時間医学、時間栄養学といった最新の科学的知見をベースにして、体内時計に従って日々、常に快適で効率よく過ごす秘訣を『最新の科学でわかった! 最強の24時間』(ダイヤモンド社)より抜粋して紹介します。
菓子パンと血糖値の意外にも怖い関係
朝は「パン食」か「ご飯食」か。
さまざまな機関が統計をとっていますが、その多くで、日本人の朝食はパン食がご飯食を上回るという結果が出ています。
これは若い世代に限ることではありません。高齢者の間でも、朝は手軽に食べられるパン食が増えているといいます。
しかし、実は朝のパン食はあまりおすすめできません。その理由の1つに、パン食はご飯食よりも糖質のとりすぎにつながりやすいことがあげられます。
パン食の場合、パンそのものにも糖質が多く含まれているのはもちろん、デニッシュのようなさらに糖分たっぷりの甘い菓子パンだったり、甘いジャムを塗ったりすることも多くなりがちです。
また、原料である小麦粉や砂糖はGI値(グリセミック・インデックス。食品を摂った際の血糖値の上昇スピードを数値化したもの)がとりわけ高く、ご飯に比べて血糖値が急激に上がりやすいリスクもあります。
そもそも通勤時は、朝のラッシュなどによるストレスが非常に強い状態にあります。血糖値はストレスでも上昇することが知られており、よって、通勤・通学する人にとって朝はたとえ甘いものをとらなくても血糖値が上がる傾向にあるのです。
甘いものをとって血糖値が上がれば一時的に元気になりますが、血糖値が急上昇すると膵臓からインスリンが多量に分泌され、血糖値は急降下します。そうなると、会社に着く頃にはやる気が落ち、仕事のエンジンもかかりにくくなっているでしょう。なんとかエンジンをかけようと甘いものに手を出すと、また一時的に元気になりますが、それもつかの間、血糖値が下がるとともにやる気が下がり……こうした間食を繰り返すうちにやがて高血糖が慢性化し、糖尿病のリスクが高まります。
そればかりでなく、慢性的な高血糖はインスリンを分泌する膵臓を酷使するほか、ストレスによって副腎皮質にもダメージが及び、腸の蠕動も低下するなど、臓器への負荷がどんどんとかかっていきます。また、1日中ひっきりなしに血糖値が乱高下していたら、やる気が上がったり下がったりして、メンタルにも悪影響が及ぶでしょう。
ちなみに、佐古田三郎氏(刀根山病院院長)によると、パーキンソン病の患者さんの多くは、朝に菓子パンなどの甘いものを食べる傾向にあり、こうした食事を改善してもらうだけでパーキンソン病の症状が改善されていくケースがあるといいます。
「パーキンソン病は脳の病気だと思われていますが、多くの患者さんと接する中で、腸の働きや食事の内容も深く関わり合っていると感じるようになりました。朝の光を浴びるだけでなく、食事によって代謝のリズムを整えていくことも、生体リズムを整え、病気の改善につながってくるからです。朝の過ごし方をゆとりのあるものに変えるだけで、パーキンソン病に限らず、がんやメタボリックシンドロームなど、多くの病気のリスクが減っていくでしょう」(佐古田氏)