はるか昔から日本人の生活に溶け込んでいた仏教と神道。しかし、いつからか伝統宗教は身近になり過ぎて、あえて意識することがない空気のような存在になりつつありました。

 ところが3月に東日本大震災が発生、津波で住宅などが全て流されたり、身近な方が亡くなられたりしたことで、多くの人の意識や人生観に変化が生じ、心の拠り所としてその存在が改めて見直され始めています。

 偶然にも、今年は伝統宗教イヤーとも言える1年です。

 仏教界では親鸞の死後750年、法然の死後800年という大きな節目の年に当たり、「大遠忌」と呼ばれる盛大な法要を開き、2人の教えを心に刻みます。神道でも、伊勢神宮の建物や調度品を一新する式年遷宮に向け、さまざまなイベントが行なわれています。

 そこで、今回の特集では仏教や神道の魅力についてあますことなくお伝えします。
まず、仏教の魅力は、その道の第一人者が伝えてくれます。

 臨済宗の僧侶にして芥川賞作家、そして東日本大震災復興構想会議のメンバーにもなっている玄侑宗久住職には「震災と宗教」についてわかりやすく語っていただきました。また、スリランカ上座仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老、浄土真宗門徒で直木賞作家の津本陽氏、『ブッダの言葉』『考えない練習』などの著書で知られる小池龍之介住職といったそうそうたる方々にも、仏教の教えや魅力についてインタビューしています。

 それだけではありません。普通では知り得ない伝統宗教の裏側にも切り込みました。仏教界のカネの流れ、全神社の中心に位置する伊勢神宮の内側に光を当てます。また、謎に包まれる全国7万9000社を傘下に収める神社本庁の大解剖、日本随一の収益力を誇る明治神宮が神社本庁から離脱した事件の真相解明を試みました。

 こうした伝統宗教の初心者用のコンテンツも充実。基礎知識はもちろん、仏教の体験ガイドや日本中の名物神社特集なども網羅し、ボリューム満点の特集です。

イチオシは仏像や寺、神社が持つ神秘的なパワーをビジュアルで楽しむことができるグラビアページ。なかでも仏像曼荼羅のイメージカットは密教美術の迫力を楽しむことができ必見です。

 特集を通して、深遠なる伝統宗教の世界に浸っていただければ幸いです。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木崇久)