最初はやはり、憤りや悲しみの両方が襲ってきました

石黒 闘牛については、行われている場面を見たわけではないけれど、さまざまなジャンルの現場を訪ねて、精神的にきついと思ったことはないですか?

本庄 やはり最初は、保健所で、殺処分されることになるであろう犬や猫に接したり、殺処分の機械を見たりするだけでも、心がズキズキ痛みました。他にもたとえば、動物福祉につながる見地をより広めるために、食肉処理工場を訪ねたり、犬を食べる韓国では、食肉用の犬が売られている市場にも足を運びました。

石黒 すごいですね。内澤旬子さんの本、『世界屠畜紀行』にも通じるような体験ですね……。犬猫問題で言えば、今、『盲導犬クイールの一生』が中国製作で映画になるのですが、そのプロットが先日届いて、クイールが犬肉業者に追われて助かる、なんというシーンが出てきます。欧米はもとより、日本との大きな差は感じました。

本庄 うわ、すごいですね! そういう現場におけるセンシティブな問題もですが、虐待の話しなども聞くと、当初、憤りや悲しみの両方が襲ってきてダメージが大きかったです。もちろん今でも、普通にズキッとしますが、動物のために何ができるのかという研究を続けているので、今は、尾を引かなくなりました。

石黒 さすがです。だって、僕のように、本を作るという仕事の一部として問題に向き合うのと全然違うでしょうね。毎日、動物全体の側から考えているんですから悲しんでいたらきりがないか……。

本庄 でも、あまりにショッキングな映像を見た時などは、夢に出てきたりはするので……。

白い犬ジーンと日陰で休憩中(スペイン)

犬は人間の考えてることを頭に浮かんでいる映像から捉えるとか

石黒 でしょうねえ……。『犬といのち』を編集していた時、それほどきつい写真ではないですが、1日じゅう僕としてはかなりダメージのある写真をセレクトのために見続けた日があったんですね。そして夜家に帰って、うちの豆柴、センパイって名前なんですが(笑)、すごく愛おしくなって抱いていたら、震えていたんですよ! 犬は人の考えてることを頭に浮かんでる映像として捉えると聞いたことがあるので、その時は、驚いて、もう二度とこんな気持ちで抱いたりすることはやめようと誓いました。

本庄 そのお話は驚きです! 私もいま実家に、愛犬クーがいます。本のプロフィール写真で一緒に写ってます(笑)。クーと会えるときは気をつけないといけませんね。

石黒 ところで、いまあげていたような所もそうですし、世界のアニマルシェルターという現場に向かうのは、特に学校からの指示とかではないんですよね?

本庄 はい。それはライフワーク、ですね。

石黒 行かなくても、研究者としては事足りるわけですよね?

本庄 極端に言うと、デスクワークだけでもいいとなりますね(笑)。