次世代エネルギーシステムの基本理念

 東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、日本の将来のエネルギーシステムに関する議論が盛り上がっている。原発か再生可能エネルギーか、という狭い視野に留まることなく、次世代に目を向けてエネルギーシステムを議論することが、今の日本にとっては重要だ。震災で改めて分かったように、信頼あるエネルギーシステムは生活、産業活動の基盤である上、エネルギーこそ最大の成長原資である低炭素産業の中心であるからだ。

 前回述べた様に、次世代のエネルギーシステムを立ち上げるには5つの理念が必要だ。

 即ち、特定の技術、資源、供給システムに頼らない「多様性」、特定の資源への依存が少なく地球環境に貢献する「持続性」、限りある資源と自然エネルギーの効用を最大限に発揮する「効率性」、需給双方の状況が把握できる「透明性」、常時、災害時を問わず需給が適切に制御される「自律性」である。

 これに加えて、震災の経験を踏まえ二つの観点を加えなくてはならない。

 一つ目は、原発事故に伴う電源の損失をどのように補うかである。我々の試算では、今後、原子力発電所の新規建設がなく、原子力発電所の耐用年数を40年とした場合、20年後に原子力発電所の発電容量は2000万kw以上削減される。これを補うためには、徹底したエネルギー効率の向上と大胆な再生可能エネルギーの導入が不可欠だが、コジェネレーションなどによる化石燃料の利用効率の向上も重要になる。

 二つ目の観点は、発電所が立地する地域の負担を解消することである。今回の事故では、東京電力管内の電力のために、福島県の方々が悲惨な負担を背負うことになった。これまで原子力発電所を受け入れた地域には、巨額の電源立地対策交付金を交付することで、立地の負担を補おうとした。