稼ぎ頭だった医薬品が特許切れでラッシュを迎えた国内製薬大手は、ワクチンを新たな事業の柱に据えた Photo:REUTERS/AFLO

 国内ワクチン生産の主導権をめぐる椅子取り合戦がクライマックスを迎えた。7月までに厚生労働省が次世代インフルエンザワクチン量産設備建設の助成先を決めるもので、用意された椅子は三つ。国内製薬大手も参戦し、6陣営がにらみ合っている。

 新型インフルエンザが世界的に大流行した2009年、政府はワクチン不足にあわてた。国産ワクチンは阪大微生物病研究会(阪大微研)、化学及血清療法研究所(化血研)、北里研究所などの中小メーカーが細々と生産してきたため、国民に行き渡る量を用意できなかった。結局、大量輸入で急場を凌いだ。

 新型インフルエンザ流行のリスクは将来も続く。政府は再び新型が発生したときに全国民分のワクチンを国産で賄えるよう、生産設備を整備することを決めた。

 用意された助成金は950億円。助成の条件は鶏卵から作る従来の方法と比べて短期間で大量生産できる細胞培養法を用いた設備を建設すること。そして新型インフルエンザが発生したときには4000万人分以上のワクチンをすぐに生産すること。条件を満たす3者に約300億円ずつ助成すれば全国民分を賄える計算だ。

 非公開とされる応募者の顔触れは、国内製薬大手、中小メーカー、外資系製薬会社で再編された①武田薬品工業/米バクスター、②アステラス製薬/UMNファーマ、③第一三共/北里研究所、④英グラクソ・スミスクライン/化血研、⑤阪大微研、⑥スイス・ノバルティスの六つの陣営だ。

 今回、ワクチン生産に消極的だった武田、アステラス、第一三共の国内製薬の3強が揃って手を挙げた。武田はバクスターから技術を導入し、アステラスは国内ベンチャーのUMNファーマと提携。第一三共は北里研究所と合弁会社を設立した。

 これまで国内製薬大手はワクチンに事業性を見出せずにいた。日本はワクチンの副作用に過剰なまでに慎重で、世界で2兆円を超えるワクチン市場が国内は1000億円規模にとどまっていたからだ。

 しかし、新型インフルエンザの流行を機に国がワクチン促進に踏み込んだことで、市場が大きく成長する可能性が出てきた。

 ただし、国内製薬大手の陣営すべてが助成先に選定されるとは限らない。外資系は世界での実績を強みに日本市場の開拓を狙う。国内の中小メーカーは陳腐化する鶏卵法からのシフトに迫られ、資金力と販売力を持つ国内製薬大手や外資系と組むことは至上命題。

 助成金の有無は、国内でワクチンビジネスを進めるうえで、競争力を大きく左右する。したがって「選定された陣営を軸にした再編の再開もありうる」とはある製薬大手の幹部。助成先の決定段階に入ってなお、再編の火は消えていない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

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