脱原発・自然エネルギーシフトへ
国民と政治に起こり始めた“地殻変動”

 これまで、原子力政策を強硬に推進してきたのは、自由民主党である。
自然エネルギーに関しては、川口順子さん、塩崎恭久さんなど、個人的に積極的な議員はいても、党全体としては消極的だった。

 その自民党の空気が、ここへきて変わりつつある(下図参照)。

 河野太郎さんが立ち上げた「自由民主党エネルギー政策議員連盟」には、「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」に名を連ねる西村康稔さんが共同代表で入っている。自民党のある重鎮に聞いたところによると、この議連は党内でも重要視されているという。

 また6月22日には、自民党の正式機関として「総合エネルギー政策特命委員会」(山本一太委員長)が設置された。党内で最も強硬な原発推進派でエネルギー政策を統括する甘利明さんが、この委員会の設置を了解したとされる。

 6月14日には「エネルギーシフト勉強会有志議員」が主体となり、「『再生可能エネルギー促進法』早期成立を求める提言」を首相官邸に持ち込んだ。その文書には、党派を超えた206名の国会議員が賛同人として署名している。過去に見られなかった動きである。こうした現象も、政治で起きている“地殻変動”の一つと言えるだろう。

 

 また、菅直人首相が法案成立に首を懸けるということで頑張り始めた。

 もともと菅さんは自然エネルギーに関心がなかったわけではない。フィードインタリフ(固定価格買取制度、日本では全量買取制度)の実態を学ぼうと、首相になる前にはドイツを視察に訪れている。

 だが、副首相や国家戦略大臣時代、ましてや首相になってからも、自然ネルギー推進に関してまともな指導力を発揮してこなかった。ここへ来ての菅さんの頑張りは、誰の目にも唐突に映る。

 もっと早く手を打つべきだった。多くの人がそう思っているが、それでも菅首相を応援しているのは、菅さんよりも期待できる「次」が見あたらないからだ。誰が首相になっても、今の菅さんほどこの法案を真剣に通そうとする人はいない。

 国民の世論は、圧倒的に「脱原発」に傾き始めている。

 日本世論調査会が6月18日に発表した原子力発電再開の是非を問うた世論調査によると、廃炉を進めることを支持した人は約82パーセントにのぼった。この結果には、イタリア国民投票で原発凍結賛成票が94パーセントになった影響も出ているだろう。

 国民と政治の「地殻変動」は、経産省原子力行政・エネルギー政策への「NO」を表している。今こそ、国民に開かれた原子力・エネルギー政策の議論を始めるときではないか。