スムーズに買い替えられる家を選ぶ

 さらに、家を買って損をしないためには、「家=永住するもの」というよりは「ライフスタイルに合わせて買い替えるもの」という考えを取り入れることが大切です。

 そして、買い替えるということは、自宅が市場に出たときに、市場性があるかないか(高く売れるのか、安くしか売れないのか)が重要になってきます。

 ファミリー世帯においては、子供が生まれて家族が増える、そして、子供が独立して必要な部屋数が減るなど、住宅に住む家族構成が時を経るとともに変化していきます。世帯にとって持ち家に関する一つの理想は、家族構成の変化に対して適切に住宅の買い替えができることであると私は考えます。

 もちろん、子供がいない(持たない)世帯や、単身世帯においても、仕事や趣味といったライフスタイルの変化に応じて住まいを変えるケースが多々あると思います。その場合にも、やはり、家をスムーズに買い替えできることが有利であるといえます。

 住宅の買い替えがスムーズにできるためには、最初に買った住宅をいくらで売却できるかがポイントになります。それが、次の住宅の買い替えを行うための「資金」になるからです。そのためには、売却時になるべく高く売れるものを購入するという視点が必要なのです。

 今まで、住宅をローンで購入する場合には、「無理のない住宅ローンの返済額」や「自分の年収で買える物件」という点ばかりに気を取られがちでした。

 しかし、これから家を買うには、その家の「資産性」に着目し、買って結局、「得なのか」「損なのか」というところまで考えなければなりません。

 そこまで考えることによって、家を買う行為が単に「借金を背負うこと」ではなく、貯金よりも割のいい「資産形成の手段」としての意味を持ってくるからです。そして、その考え方は少しも難しいことではありません。この考え方を持っているかどうかで、将来のお金の不安が激減するはずです。

松本智治(まつもと・ともはる)
不動産鑑定評価システム代表、不動産鑑定士。神奈川県横浜市出身。大学卒業後、不動産鑑定事務所、不動産仲介業、戸建て分譲デベロッパーを経て独立、投資用不動産調査や事業用不動産コンサル業務などを行う。
住宅仲介会社では契約取引業務、戸建て分譲デベロッパーでは用地の仕入れから販売まで1000戸以上に関わる。不動産鑑定評価関連では、外資系金融機関(ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行等)からの不動産デゥーデリジェンス(詳細調査業務)なども含めて幅広く関わり、これまでの不動産価格に関する鑑定及び査定実績は大小含め1000件以上。オフィスや店舗賃料に関する「適正賃料マーケット・レポート」の作成にも携わり800件以上の査定実績を有する。仲介から戸建て建築、宅地造成、ビル建築再開発、賃貸不動産経営、そしてエリア調査まで、不動産に関わる現場を広く経験しているのが強み。
一般の住宅購入検討者に対し、購入すべきか賃貸とするか、購入するときの物件選別ポイントなどの住まい購入に関する相談などを受け、偏らないアドバイスが好評を得ている。