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ホンダが二輪車でアフリカに攻勢をかける。出遅れていた最後の成長市場で挽回を図るため低価格戦略車を8月に投入するのだ。
年間1145万台(2010年度)を販売するホンダは、世界最大の二輪車メーカー。特に、東南アジアでのシェアは高く、ほとんどの国で過半を握っている。今後の成長余地もまだまだ大きい。
年間1145万台で売上高1兆2881億円という10年度の実績に対して、「将来的には新興国を中心に3000万台近くにまで伸びる」(ホンダ関係者)と見ている。
新興国でのおよその収益構造は、「工場建設に100億円を投入し、年間売上高約500億~600億円を見込み、2年分の利益で100億円を回収」というもの。資金も期間も四輪事業の数分の1以下ですむ機動的なビジネスだ。二輪事業の営業利益は1385億円、売上高営業利益率は10.8%と四輪事業の3.9%よりも高い(10年度)。
ホンダの屋台骨を支え、アジアでは向かうところ敵なしの二輪事業だが、アフリカではまったく事情が異なる。
年間300万台が販売されるアフリカ大陸全体でのホンダのシェアはわずか1%程度。ほとんどを中国とインドの格安二輪車メーカーに握られているのだ。
アフリカ市場は「格安のバイクを壊れるまで乗りつぶして、アフターサービスは気にしない」という特性があるという。そうした前提で作られた二輪車と価格差が生まれるのは必然だ。
現在、ホンダの主力商品である排気量125ccの二輪車はナイジェリアでは10万円以上で売られている。これに対して、中国やインド製の格安二輪車は5万~7万円程度だという。
その市場に8月、新たな戦略車を投入し、勝負をかける。
新車種は、中国での部品調達体制を見直し、品質を落とすことなく安価な部品を入手、それをナイジェリアの工場で組み立てることにした。
その結果、日本円にして約6万5000円を実現した。5万円程度という中国車の価格よりは高いが、インドのメーカーであるパジャージの主力車種と同等になる。まずはナイジェリアで販売し、アフリカ全土を狙う。
「15年ほどたてば、アフリカはホンダにとって大きな市場になる可能性がある」と見込む。
2000年代初頭、ベトナムなどで中国製の粗悪なコピー二輪車が市場を席巻。ホンダの地位が脅かされた時期があった。しかし、コピーメーカーが決してまねできないレベルの安くて壊れない二輪車を投入することで、再びシェアを挽回することに成功した。
ホンダがアフリカで狙うのは、アジアビジネスの成功に学んだ一気呵成のシェア奪取だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)