フランス式でもイギリス流でも
テロは防ぎきれなかった

 フランス、ベルギー、そして英国でテロが連続して起こっている現実が示すことは、この連載が紹介した、「テロ対策は英国流かフランス流か」(2017.5.23付)ということを論じる次元を超えてしまったということではないだろうか。

 まず、「目に見える形での治安維持の強化」によってテロを抑止するという方法は無力だといえる。自動小銃をもって武装した憲兵や警察を主要駅や街頭に立たせて警戒しても、それだけではテロは防げない。それは、ISのテロの最大の攻撃目標となっているフランスを見れば明らかだ。

 2015年1月に起きた風刺週刊誌シャルリー・エブド襲撃事件を契機にして、頻発するテロに対抗するため、既存の軍隊、警察組織に次ぐ新たな治安維持組織として「National Guard(国家警備隊)」を新設するなど、徹底的なテロ対策をとった。しかし、2015年以降、238人がテロの犠牲者になっている。

 要するに、自動小銃を持った警官を街に並べても、テロ組織が事前に集会を開き、同時多発テロを実行したら手も足も出ないのだ。それでは、事前にテロを察知する体制を構築したらどうか。

 英国内には約420万台の監視テレビ(CCTV)が設置されている。ロンドン市民が普通に生活していると、1日に約300回監視テレビに捉えられる。携帯電話やPC、ラジオ、電子切符「オイスター」などから得られる様々なデジタル情報を組み合わせて、特定の人物の所在を高精度に追跡できるデータベースも構築している。

 犯罪人データベースには、約400万人分のDNAサンプルを所持している。地方自治体、刑務所、保護観察、福祉部門の職員、学校や大学の教員、NHS(国家医療制度)の医師、看護士は、過激化の兆候を見つけたら当局に報告することが義務付けられており、情報機関と警察の間の情報交換も綿密に行われている。

 英国はこのような「監視社会」を築いて、過去4年間で13件の大規模テロを未然に防ぎ、常に500件を調査対象としているという。要注意リストには約3000人が掲載され、別の300人を監視下に置いている。