新しい社会の仕組みを根付かせ
人間の行動を制御する4つの方法

 冒頭で述べたように、日本で言えば明治維新と高度成長が同時に訪れている中国では、インターネットをベースにした新しい社会の仕組みを、実際に人々が運用している中で、いかに定着させられるかが大きな課題となっている。

「クリエイティブ・コモンズ」という概念を提唱したことで知られている、インターネット時代の法学を考える・ハーバード大学のサイバー法学者ローレンス・レッシグ教授は、人間の行動を制御するための4つの方法として、以下のように整理した。

・「規範」…マナーのようなもの。人前で鼻をかまない、といった形で現れる
・「ルール」…罰則があり法解釈がある法律
・「アーキテクチャ」…お金が足りないと注文ボタンが押せない等、“仕組み”で解決
・「損得」…人はソロバンに合わない行動をあまりしない

 レッシグ教授の言う「規範」や「ルール」が、十分に定着しづらい混沌とした状態にある中国においては、「アーキテクチャ」と「損得」でユーザーの倫理観を向上させていくという発想が重要になる。

 例えば先述したように、かつての中国の自販機は、現金の認識率がきわめて悪かったためにユーザーにとって極めて不便だった上、治安の問題や故障の問題からサービス提供側にとっても儲からないものだった。つまり、アーキテクチャと損得の両面が普及を妨げていたわけだ。

 ところが、インターネット監視カメラで盗難問題が解決され、スマホ決済で飲み物が買えるIoT自販機の登場のよって、アーキテクチャと損得の両方の問題が解決し、普及に弾みがついた。

 深センはこうしたイノベーションの格好の実験場といえる。次回は、中国で急速に普及している自転車シェアリングサービスなど通じ、さらに「損得」と「アーキテクチャ」を軸とした社会変革について考えてみたい。