――権利者の方といっても海外では様々ですよね。
玉置 そうですね、著者本人が権利を持っている場合、代理人が持っている場合、出版社が持っている場合、著者の親族が持っている場合などがあります。著者ご本人とお会いするのは刺激的ですし、専門職として経験を積んでいる代理人の方の場合は転職や開業することもあって、信頼関係を築くことで立場が変わっても「一緒にやりましょう」と引き続き誘っていただけるのはうれしいですね。私自身のクライアントはほとんどそのような形で続いています。
刺激を受けた数々の出会い
――お会いした著者の方で印象に残っている方はいらっしゃいますか?
玉置 FRB議長を務められたアラン・グリーンスパンさんには、取材の同行や講演でなど3度お会いしました。世界経済に影響力を持つ方だけに緊張もありましたがとても刺激的でした。彼は入浴中に考え事をすることが知られていて、2時間ほどもお風呂場にいるらしいのです。担当させていただいた『波乱の時代』のごく初期の構想を記したメモを拝見する機会を得たのですが、湯気でくしゃくしゃになった紙の中心から渦巻き状に手書きの文章が書かれているんです。それを見たときは「こんなふうに生まれたんだ」と感動しました。
『フラット化する世界』を著したトーマス・フリードマンさんのオフィスにうかがったときのこともよく覚えています。ニューヨーク・タイムスのトップ記者である彼のオフィスは鍵付きの個室で、中に入るとまるでリビングのようでした。ソファがあって家族の写真があって……。個人事務所ではなく、ニューヨーク・タイムス社内のオフィスのお話です。自分の足で取材してきたものをこういう環境で熟考し、記事にしていくのだなと、こちらも作品が生まれる背景を垣間見た気がしました。
その他にも、コーチングの神様と呼ばれるマーシャル・ゴールドスミスさんは、以前に「ニューヨーカー」誌の記事を読んで「こういう人が本を書いたら面白そうだな」と思っていたところに『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』の企画が舞い込んだり、『サイエンス・インポッシブル』の日系3世の物理学者ミチオ・カクさんの話題の幅、知識の量の膨大さに驚いたり、名前を挙げられなかった方も含めて、いつも刺激をいただいています。