しかも、安倍政権としての重要案件は、通常国会での「退位特例法」と「テロ等準備罪法」の成立で、「憲法改正」を残してほぼ処理を終えている。換言すれば、憲法改正を除けば、国会が紛糾し衆院解散に追い込まれかねないような懸案事項は残っていない。

 安倍首相は憲法改正については、今年中に自民党案を取りまとめ、来年の通常国会で憲法改正の発議を目指すと表明している。憲法改正は基本的には、国会の「憲法調査会」において超党派で議論されていく。安倍首相は5月に、「憲法9条2項を残して自衛隊の文言を付け加える」ことや、「教育無償化」を加憲することを提起した。それには、より本格的に改憲を検討してきた与野党の議員から異論が噴出し、様々な「私案」が飛び交うようになって、明らかに改憲の議論を加速させるようになった。

 要は、安倍首相に対して「もっとまじめに改憲を考えろ」という声が与野党から起こってきているのだ。こうなると、改憲を政局にして倒閣には使うのは難しい。要するに、安倍政権の支持率低下は懸念されるが、基本的には現有勢力を減らす可能性が高い解散を断行する理由がない。首相はいまだに、2018年12月の衆院議員任期満了まで、解散のフリーハンドを握っているといえるのではないだろうか。

改憲は全て安倍首相の
ペースで進んでいる

「改憲」を巡る各政党の攻防について、もう少し掘り下げて考えてみたい。現時点で、「ポスト安倍」の有力候補の1人は、石破茂前地方創生担当相であろう。このところ、安倍批判を強めている石破だが、改憲については安倍首相の案を「不十分である」とする。石破氏は超党派で積み上げてきた「憲法審査会」の議論をベースに、より本格的な改憲をすべきと強く主張している(日経ビジネスオンライン『私の憲法改正論:石破氏「安倍首相の憲法改正案では不十分」』

 一方、石破氏とともに「ポスト安倍」の有力候補である岸田文雄外相は、外交・安全保障面での厳しい現実に向き合ってきた経験から、改憲の必要性を強く認識しているだろう。つまり、今後安倍政権の支持率低下が止まらず、来年9月の自民党総裁選で安倍首相が敗れる事態となったとしても、後継首相はより本格的な改憲に向かうと考えられる。