世界同時株安、円高などで世の中は大混乱している。マスコミの報道を見ていても、いろいろな原因をその場限りで説明しているようで、どこか釈然としない。

円高をうまく説明できない
マスコミを始めとする巷の俗論

 例えば、為替は国力の反映とみる意見がよくある。素人が漠然とそう思うのはわかるが、専門家ですらそうした意見があるのには驚かざるを得ない。例えば、速見優・元日銀総裁は「その国の通貨の強いことがその国の国力や発言力に直接、間接に影響を持つ」(速水優著『強い円 強い経済』東洋経済新報社)といっていた。

 東日本大震災直後には、円の暴落という意見が多かった。その後、そうした意見に反して円高が進むと、今度は欧州財政危機を持ち出し、次には米国の債務上限問題まで取り上げて、日本が消去法で選ばれているという説明が多かった。ところが、米国の債務上限問題がクリアされても円高は止まらなかった。そこで、今度は米国債格下げになって、それでも円高は変わらなかった。ところが、米国株式市場は動揺して暴落した。その資金が、消去法的に円に流れ込んで、円高基調だと説明されている。

 その場しのぎの「滑った転んだ」という現象記述であって、どういうメカニズムなのか、さっぱりわからない。

 若干不謹慎かもしれないが、これは経済学の格好の題材だ。マスコミなどの話には、為替がどのように決まるのか、株価がどのように決まるのかという話が決定的に欠けているので、何がどうなっているかがわからない。