初めてお会いしたのはクリスマス・イブ。
その場でスラスラ出てきた追加プロットに度肝を抜かれました!
――初めて作者にお会いしたのはいつ頃ですか?
廣畑 選考会が終わって1ヵ月くらい後の12月24日です。小倉まで伺いました。それまでに何度も原稿を読んで、疑問点や矛盾点、あと選考委員の先生方に指摘していただいた箇所なども細かくチェックしておきました。
実は、ご家族もいらっしゃるのでクリスマス・イブに訪れるのはどうかと心配していたんです。でも、お寺さんなので大丈夫と言ってくださって。ほっとしました(笑)。
小倉では昼食をご一緒して、実際に書籍化に向けた打ち合わせを数時間、行いました。その際、最終選考の時にメモしたことは、すべてフィードバックしました。一番重要だったのは、いわゆる「慶長の役」についての加筆のお願い。「秀吉と静かに対決するシーン」でもうひと盛り上がりできないか、正直に伝えてお願いしました。また、最終選考会で幸田真音先生が、「石田三成の描き方がとても魅力的。もっと出てきてほしかった」と言ってくださったので、それもお伝えしました。
――指方さんの反応は?
廣畑 そこまで読み込んだことに対して、喜んでくれていたように思います。それよりも、この小倉滞在時に驚かされたのは、打ち合わせ後に再度待ち合わせをし、夕食もご一緒させていただいたのですが、そのときには加筆分のプロットがあらかたできていたことです。さらにこれは加筆パートが完成した後の話になるのですが、石田三成の登場シーンも増えていて、物語にさらに深みが出ました。
この日は、夜にまたお会いして日付が変わるころまで楽しくご一緒させていただきました。その席上でこれまでいろんな賞に応募されたお話や執筆に関するお話など、さまざまなお話を伺いました。
その時のお話で一番印象に残ったのが、指方さんの作品づくりについてですね。指方さんの作品はプロットがとてもしっかりしているんです。今回の作品でも、時間軸をうまく利用していますし。ところが、新たに作品を書き始めるときは、事前に細かくプロットをつくるということはあまりしないそうです。書きながら徐々にできてくるそうで、『銭の弾もて秀吉を撃て』もそうやってできたとのこと。あれだけの分量の作品を細かいプロットなしでつくるとは、と驚いたのを覚えています。
大賞というのはコンテストなのでシビアですが、受賞された方の喜びはさぞかし大きいでしょう。編集者はそれを一緒に噛みしめながら、出版に向けて動き出します。明日公開の後編では、ダイヤモンド社でも珍しい歴史小説が誕生するまでを語ってもらいます。(なお、もう一つの受賞作『黄土の疾風』のメイキングは、来週25日、26日の公開予定です)
【書籍のご案内】
『銭の弾もて秀吉を撃て ――海商 島井宗室』
安土敏氏、幸田真音氏激賞!
第3回城山三郎経済小説大賞受賞作、満を持して登場。
「商」の力で「武」の秀吉に抗った男、島井宗室。
戦国時代に翻弄されたひとりの商人、その数奇なる運命を、圧倒的筆力で描ききる!
博多を舞台に、新たな「歴史経済小説」が幕を開ける。
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ダイヤモンド社からのお知らせ
第4回「城山三郎経済小説大賞」の作品を募集しております。詳しくは、以下のホームページをご覧ください。