新刊『借りたら返すな! いちばん得する! 儲かる会社に変わるお金の借り方・残し方』では、1000件以上の財務戦略を立案してきた著者による「お金の調達力」を上げるための方法を紹介しています。本書から、「お金と会社の関係」「銀行との正しい付き合い方」「節税対策のウソ・ホント」「お金で困っている企業が意外と知らない対策」「企業再生で成功したノウハウ」などを公開します。

リスケジュールの重要性を知る

 調達力を上げて、借入残高を減らさないように折り返し融資などで借り続けているのは、リスケジュールと似たようなものです。

 結局、どちらも返していない状態です。

 もちろん借入ができるうちは借り入れたほうがよいですが、貸してくれなくなったら返さなければいいのです。

 でも、預金を押さえられるんじゃないかとか、不安に思う方も多いと思います。

 もちろん銀行はいい顔はしませんが、基本的には応じてくれます。

 リスケジュールには慣れているので、淡々と対応してくれるケースが多いです。

 普通預金を押さえられるようなことは、よほどのことでないとありません。

 それでも不安であれば、入金口座は債権者である銀行以外にしておいたほうが無難かもしれません。ただし、急にお金を動かすと、不信に思われるので徐々に移しましょう。

 一方、定期預金は事前に解約しておかないと押さえられるので、リスケジュールの交渉に入る前には、あらかじめ解約しておいてください。

 そもそも定期預金などしないほうがいいのです。担保ではないといっても相殺されてしまいますから。

 その他の担保の解除なども晴れの日にやっておきましょう。雨が降ってきたらこちらに有利な交渉はできません。

 売上5億円ほどの会社で、現預金2億円と年商の半分近い現預金を持ちながらリスケジュールした案件があります。

 銀行からはさすがに「まだリスケジュールしなくても、大丈夫でしょ?」と言われましたが、「これから業績が悪くなることが見えているんです。では乗り切るために新規で貸してくれますか?」とお願いしました。

 答えは「ノー」でした。

「そうであれば、最低1年間は返済できません。その間にビジネスモデルをつくり直すので時間をください」とお願いし、なんとか各行の合意を取り付けました。

 年商の半分近くの現預金を持ちながら、リスケジュールしたのは、売上の80%を支えていた大手からの案件がストップする事態が起きてしまったためです。

 なんとか営業を頑張り、他の案件で穴埋めしながら、徐々に回復はしてきていましたが、半年後に手元資金は底を突きかけました。

 リスケジュールの判断が1か月遅かったら倒産していたかもしれません。

 以前から、絶対に潰れない現預金を持とうときちんと調達しながら経営していたので、これほどの事態でも乗り切ることができたのです。

 必要なときに借りるという財務戦略で経営していた場合、売上80%減の危ない会社が急に半年分の資金を調達できるでしょうか?

 先に調達していた場合は簡単です。

 返さなければいいだけです。

 やはり、晴れの日に借りておかないといけないのです。