また、中退率の高い私立大学は受験生から敬遠され学生募集にも影響が出てしまいます。まさに悪貨が良貨を駆逐し、正直者はバカを見てしまうのです。国立大学が多めに学生をとって、どんどん中退させていくというのはありえますが、それが私立大学や地方大学にどのような影響を与えるのか、綿密な研究が必要です。このシミュレーションはやってみる価値はあると思います。

学生を真剣に学ばせるには
やはり魅力的な授業が必要だ

 中退率を増やさなくても、学生を真剣に学ばせるための工夫はいくつもあります。学生の好奇心を掻き立て、魅了する内容の授業を創ることです。

 今でも、芸術系学部の学生は熱心に勉強しています。私はこの4月から、東京大学の一、二年生を対象に学芸饗宴と題してゼミを始めています。この東大のすずかんゼミは、日本にもハーバード大学やエール大学に負けないぐらい勉強する学生の集まりにしようと頑張っています。

 昨年は、すずかんゼミに半年所属し、秋からハーバード大学に転校した学生もいましたし、今年も秋からエール大学に転校する学生や、秋からシンガポール国立大学に留学する学生がいますので、正確な比較が可能です。東大すずかんゼミでは、応募学生100名に対して、入ゼミ試験を行い、試験問題を見て棄権した学生が4割、最終的に14名に絞り、二ヵ月たったところで2名が抜け、12名となっています。

 12名の学生に対して、約10名のTA(Teaching Assistant)が付き、一学期間だけでも、各界の最高峰の方々7名に学外講師をお願いするといった、贅を尽くした内容を用意しています。学生もそれに応えてくれて、毎週一回行われる本ゼミは夜12時近くまで続きますし、その準備のための読書量も半端ではありません。それ以外にも、学生同士、TAとの補講も随時、精力的に行われています。

 しっかりと体制を組んでいけば、日本の文系学生でもしっかりと学んでくれることを彼らは証明してくれています。東大すずかんゼミの場合は、TAも、学外講師も、ほぼボランティアでやってくださっていてありがたい限りですが、仮にこうした方々にしっかり人件費を払ったとしたら、とてつもない金額になります。米国のトップ校の授業料が600万円になることがよくわかりました。やはり、投資なのです。

 また、ソーシャルイノベーションを学ぶ慶應義塾大学のすずかんゼミも、様々な方々のご支援により、社会人助手が4名指導体制を構築できていますし、私とご縁の深い数多くの企業がインターンや協働プロジェクトのチャンスや、休暇時の海外派遣のチャンスなどを与えてくださっているおかげで、学生も本気になって学んでいます。

 学生がしっかり学ぶためのもう一つの方法は、就活と直結させることです。就活と直結すれば、学生は学びます。看護学部も医学部も、資格と直結するから学ぶのです。

 文系の場合、まじめな学生は、就活のときに企業の人事担当者が面接で、部活・サークル活動とアルバイトの話しか聞いてくれないと嘆いています。結局は、文系の学びが企業から、部活・サークル活動やアルバイト以下の評価しかされていないことと、企業の人事も自分たちの学生時代の経験から勝手に判断して、充実しつつある大学の学びの実態を知らないという、二つの要素が合わさって、こうした悪循環に陥っているのだと思います。