若手社員が思うように育たない、注意するとすぐに落ち込んでしまう――。こうした声が企業の人事担当者や管理職からよく聞こえてくる。しかし、その状況を「(今の新卒社員は)ゆとり世代だから」と片づけてしまうのは尚早だろう。かつては年功序列、終身雇用のなかで脈々と社員教育がなされてきた。しかし定期的な新卒採用の中止やプレイングマネジャーの増加などにより、以前は機能していたOJTによる教育がままならない状況が続いていることも、若手が育たなくなった1つの要因だ。グローバル化が進むなか、優秀な人材を育てるために日本企業はどのように社員教育や人事制度改革を行うべきか。競争の激しい外資系企業で活躍をしたマネックス証券・松本大社長とネットイヤーグループ・石黒不二代社長にその答えを問うた。
外資系には日本のような社員教育がない!?
それでも社員が成果を出せる理由
――外資系企業での就業経験があるお二人ですが、入社後にはどのような社員教育を受けてこられたのでしょうか。
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松本 私が勤めていたソロモン・ブラザーズとゴールドマン・サックスでは入社後に社内教育が行われていましたが、その内容は基本的にファイナンスの基礎である債券数理やリサーチなどに関する会社がつくったテキストを渡されるだけ。会社が出すリサーチペーパーを自分で読むこともありましたが、新入社員が会議室などに集められて講義を受けるような、多くの日本企業が行うような研修は一切ありませんでした。
石黒 私が勤めていた外資系企業でも社員教育はありませんでした。多くの外資系では、中途採用は即戦力として採用されますし、新入社員に関しても、日本企業が行うような一斉に行われる社員教育はあまりないのだと思います。
それにしても、外資系企業のような教育体制と日本企業のような社員教育、どちらがいいのでしょう。ネットイヤーグループでは、教育プログラムを整えていないという理由で、まだ新卒採用に踏み切っていませんが、そもそも従来型の社員教育が必要かどうかから、改めて考えてみる必要がありますね。マネックス証券では、新卒社員はどれくらいいらっしゃるのですか。