ティム・クックは、スティーブ・ジョブズの跡をうまく継げるのか。

8月24日にCEOを電撃辞任したスティーブ・ジョブズ(右)と新CEOのティム・クック(左)Photo: Reuters/AFLO

 アップルの共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズが8月24日にCEO(最高経営責任者)を電撃辞任して以来、ここアメリカのテクノロジー業界やメディアはこの話題でずっと持ち切りだ。製品開発を何年も前から仕込むアップルのこと、今後数年間はジョブズがすでに敷いた体制のもとで、同社はこれまでどおりに新製品を発売し、好業績を維持すると考えられている。

 だが、テクノロジー業界の変化は激しい。ジョブズが仕込んだマジックがいずれ消え去ったとき、アップルが今と同じ輝きを発し続けていられるかの保証はまったくない。

 ジョブズは、ことにiPhone、iPadでポストPC時代、つまりPCの次に来る時代への地盤固めをした。持ち歩けるコンピュータのようなiPhoneやiPadは、いつでもどこでもユーザーがデータを引き出し、自宅やオフィスと同じようにデジタルライフをおくることを可能にした。だが、そこへ競合も一斉に参入。アップルは特許侵害を理由にライバルを相次ぎ訴えることで、参入壁を高くしようと目論んでいるが、ライバルもすぐさま対抗策を整えて反撃に出ている。

 そうした中で、新CEOのティム・クック率いるアップルの不安は何か。ここでは、その最たるものを5つ拾ってみよう。

(1)モバイルのアプリケーションの技術先進度

 iPhoneやiPadは、スタイリッシュで、わかりやすく使いやすいユーザーフレドリーさが特徴だ。たが、たとえば、アンドロイド機器に比べると、高い技術を持ったアプリケーションがいくつか欠けている。

 たとえばそのひとつは、アンドロイドユーザーにかなり人気のある音声認識機能だ。地図を呼び出し、行きたい場所の名前(コンサートホールなど)を告げれば、アンドロイド携帯ではすぐにその場所が地図上にマークされる。

 あるいは、音声合成機能もある。設定すれば、行き先への道順を音声でも教えてくれる。これはナビゲーションシステムとして使えるほどに精度がいい。

 アップルも、音声認識機能を次のiOSに搭載する計画であるらしいが、かなり後れを取ったと言わざるを得ない。グーグルのように、社内で同時開発されている技術を、そのままデバイスに盛り込めるような環境がない弱みを、どうカバーするのか。