携帯電話機器の販売のみならず、国際電話すらもビジネスのネタになる。

 北朝鮮当局公認の携帯電話は、海外とは通話できない。そこで、貿易や外貨調達などで、海外の取引相手などと安全に通話するため、主に中国キャリアの携帯電話を貸し出すビジネス、いわば通話ブローカーが生まれた。

 通話ブローカーには、治安当局者が関わることもある。ブローカーは、電波を監視する機関にワイロを渡して、国際通話を見逃してもらう。

 通話料金は1時間あたり500元(約7620円)と非常に高価だが、念のため安全な通話のためのノウハウも教える。例えば、北朝鮮の治安機関は電波探知機を駆使して、海外との通話に対して厳しい監視をしている。これに対して、電波が探知されにくく、また探知されても見つかりにくい山の中や、安全なスポットで通話するノウハウを伝授するのだ。

 一般庶民の一部には、移動しながらの通話だったら発信源が特定しづらいことに気づき、携帯電話に繋げたイヤホンマイクをマフラーと帽子で隠し、歩きながら通話するという。それだけでなく、自転車に乗って走りながら通話する人もいるという。携帯電話一つとってもありとあらゆるビジネスを考え出すのが北朝鮮の庶民たちだ。

脱北者からの外貨送金が
起業を支える

 単純なモノの売買から始まった市場経済化は、日増しに発展しているようだ。

 例えば、国営で立ち行かなくなった炭鉱の権利を個人が買い取って、国営企業の看板を掲げながら、事実上、会社のように経営される「自土(チャト)」。また、商売をしたいが資金がない人のために外貨を保有している人を紹介して、その手数料をもらう「ファイナンス・ブローカー」も存在する。

 外貨を元手に起業する人たちも出ている。数年前に、毎日新聞の記者が興味深い記事を書いている。

 企業家と名乗るある北朝鮮男性は、食品加工業を始めるため、「誰が外貨を持っているか」という情報を仲介する業者に200ドル(約1万6000円)払い、出資者6人から総額5000ドル(約40万円)を集めた。それを元手に操業されていない国営企業の機械を買い取り、改造して、食品加工ビジネスを始めた。

 当時で、原料費約300ドルに対し約1200ドルを売り上げていたという。ちなみに北朝鮮の3~4人家族の平均的な生活費が約100ドルだ。

 市場市場経済で生きる中で、北朝鮮の人々は、様々な制約に縛られながらも、試行錯誤を繰り返しながら、学んでいるわけだ。