□第一世代
  理論の学習とその適用事例を学ぶケーススタディである。基本を学ぶにはよいが、これだけでマネジメントを理解したと錯覚することは甚だ危険である。自ら経験していない事柄まで机上の論理で正解を導き出せると勘違いすることは、組織に悲劇をもたらす。

[ヘンリー・ミンツバーグ教授とは]

カナダ・マギル大学クレグホーン寄付講座教授。
1961年マギル大学工学部卒業。MITスローンスクールでMBA取得、68年に同大学院にて博士号を取得。同年母校マギル大学に戻り、教鞭をとる。カーネギーメロン大学、ロンドンビジネススクール、欧州経営大学院等で客員教授を歴任。
『マネジャーの仕事』(白桃書房)、『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP社)など著作多数。発表論文は150編に上り、うち2編はマッキンゼー賞受賞。2000年米国経営学会より優秀研究者に選ばれる。
マネジャーは常に過剰な仕事を抱えており、時間は細切れ、そんな中ですぐ意思決定を迫られる――そんな過酷な“マネジャーの現実”を教授は把握しており、だからこそ、教授の指摘は世界中のマネジャーの心を捉える。
机上の理論を振り回す経営学者と一線を画した、「異能の人」といわれるゆえんである。

□第二世代
  アクションラーニングなどで、実際のプロジェクトを教室に持ち込む学習法。プロジェクトをメンバーで推進しながら、実践的な学びを深めていく。しかし、ミンツバーグ教授に言わせれば、これも人工的な経験でしかない。

□第三世代
  日常のマネジメントをそのまま学びとする方法。重大な意思決定であれ、ルーチンワークの中の些細な出来事であれ、日々の言動を取り上げ、無意識のうちに行っている判断や言動をあぶり出す。残業している部下との会話、職場での何気ない雑談でも何でもよい。支柱となるマネジメント理論をもとに、日常の行動を振り返り(内省)、学んでいくスタイルである。

  第三世代の学習法のポイントは、振り返り(内省)と対話にある。日常の出来事を話し合う相手がいれば、自分だけでは気づかない新たに発見が得られるし、また、他者の行動を参考にもできるのだ。

あのとき、なぜ、そうしたのか? 本当の原因が見えてくる!

 先ほどの残業の事例を思い起こしてみよう。あなたは、「残業している若手社員をすぐさま帰宅させる」というのが最適解だと思ったものの、頑張っている部下にそう強く言い切れなかったとする。それ以来、喉に小骨がひっかかったような、悶々とした状態が続いていた……。

 あのとき、なぜ、強く言い切れなかったのだろう? 何が引っかかっていたのだろう?

 部下のやる気を削ぐことへの不安だろうか? プロジェクトが遅れることへの不安だろうか? それとも単に気まずくなるのを避けただけだろうか?

 ひょっとすると、頑張っている部下に気兼ねしたのではなく、自分に自信がなかったからではないか?