いまメディアで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。
失敗したら真っ先に「これ」に集中しなさい
人生には失敗はつきものです。
いや、何かにチャレンジすれば必ず失敗するリスクがあります。
だから、「勝てる場所」かどうかを十分に吟味したうえで、失敗のリスクを量って、最悪の状況に陥ったとしても“命までは取られない”という範囲でチャレンジするのが鉄則。衝動的に過剰なリスクを取るようなことを決してしてはなりません。これが、失敗に処する第一の鉄則です。
では、いざ失敗が明らかになったときには、その現実にどう向き合えばいいか?
答えは簡単。ダメージコントロールに全力を集中させる。これに尽きます。失敗の原因や責任の所在の追及は必要なことではありますが、一刻も早くダメージコントロールに着手することが重要です。
これは、立場が上がるほど留意しなければなりません。ときどき、失敗を部下のせいにして責任追及に全力を上げる社長を目にすることがありますが、「イヤだな」と思うとともに、「そんなことをしている間に、ますます損失が大きくなる」と思います。そして、そういう社長はたいてい”長持ち”しないようです。ダメージコントロールは、1日、1週間、1ヶ月と遅れれば遅れるほど、損害が大きくなってしまいます。とにかく1分でも1秒でも早く着手する。それが、ダメージコントロールの最大の鉄則なのです。
そもそも、会社の失敗の責任は最終的にはすべて社長にあります。たとえ、失敗の直接要因をつくったのが部下だとしても、その部下に仕事を任せたのは社長。その責任から逃げることなどできないのです。
むしろ、失敗の責任はもちろん、ダメージを最小限にする責任をもつのは自分だと瞬間的に認めて、すべての力をダメージコントロールに注ぐべきです。もちろん、二度と同じ失敗をしないために、失敗要因や責任の所在を明確にすることも重要ですが、それは二の次。まずは、ダメージコントロールなのです。
私は、若いころから数々の失敗をしてきましたから、これが身についています。だから、部下が失敗したときも怒るのを忘れてしまうこともあります。すぐに、「どこにどういう影響が出るか? その影響を最小限にするためにはどうすればいいか?」ということに集中するのです。部下に、「怒られないから、かえって気持ち悪い」と苦情を言われたこともありますが、そのくらいでいいのだと思っています。
ちなみに、私はテクスケム・グループの幹部に、「絶対に部下のせいにしてはいけないよ」と伝えています。「私だっていっぱい失敗しているんだから、失敗してもいいじゃないか」と。保身を考えるよりも、すぐに失敗を認めたほうがいい。これを会社の文化にできれば、社員たちも自分の失敗を隠す必要がありませんから、リスク情報が私の耳に届きやすくなります。この文化を醸成できるかどうかは、約50社のテクスケム・グループの存続のためにきわめて重要なポイントだと考えています。