日本国民の意思を
国家の基本政策に反映したい
79年に米国スリーマイル島の原発事故が起きた時、スウェーデン政府は、事故直後に立法府である国会と相談をして、原発をどうするかについては国民投票にゆだねよう、国民の皆さんに聞いてみようという謙虚な姿勢を示しました。それを今、日本の政治家も学んでほしいのです。
私は、とにかく原発は国民投票に絶対かけるべきだと思っています。
その理由は、3つあります。
① 憲法改正との関連
日本の場合、憲法改正は必ず国民投票にかけられます。憲法第96条の規定があって、議会だけでは決められない、「改正の発議」つまり国民への提案しかできないのです。9条にせよ1条にせよ、必ず国民投票にかけて主権者の承認を得なければなりません。
その論理からいけば、原発をどうするかは、例えば憲法9条改憲に匹敵するくらい、この国や人類を左右する重要な問題だから、これは国民投票にかけるべきだと思うのです。
② 民主党が出した対案
07年に憲法改正国民投票法が制定されましたが、その審議の終盤で、民主党自身が、「国民投票の対象とするテーマを憲法に限らず、憲法以外の重要な案件、生命倫理の問題とか統治機構の問題、あるいは特に重要な案件ついても国民投票にかけられるようなルールを設定すべきだ」という対案を出したのです。
出しておきながら、党も政府も「原発」国民投票の実施を提唱しない。原発以上に重要な問題、案件はあるのかというと、ないはず。なのに主権者である国民の意思を確認しないというのは、納得がいかないですね。
③ 与野党の原発容認
今年の6月12、13日、イタリアで国民投票が行われた時、「日本でも原発国民投票をやろう」という動きが、一時的に盛り上がりました。
ところが、7月になると、「やっぱり原発問題は総選挙で決着をつけよう」という動きが広がりました。菅首相が脱原発を表明し、脱原発の民主党か原発推進の自民党かを総選挙で決めたらいいという声が上がったのです。
8月になって、民主党の代表選挙があり、候補者5人が名を連ねましたが、全員が原発容認です。となれば、誰が党代表になり内閣総理大臣になっても、自民党ははっきり原発容認の立場をとっているのですから、与党も野党も政府も原発容認です。総選挙で決着をつけようにも、我々の民意が反映されるわけがないのです。
一番わかりやすいのが東京1区です。
東京1区は、前の選挙で海江田万里氏と與謝野馨氏が大激戦しました。海江田氏は小選挙区制で当選し、與謝野氏は復活しましたが、後に、與謝野氏が自民党を離れて両人とも閣僚入りしました。
東京1区は、民主党の海江田氏、民主党に近いところにいる與謝野氏と、自民党候補者と、3人とも原発容認で、小選挙区制は1人しか通らないとすると、民主党あるいは自民党が好きでも原発はイヤだという人は、どこに投票したらいいのでしょうか。自民党が好きだからと、つい入れてしまったら、間接民主制で原発容認ということになります。民意と議会の多数意思の間にねじれが起きるのは、もう間違いないことです。それはよくないと思うのです。
私は、国民の多数が原発容認で行くというのなら、それでいいと思っています。脱原発で行くのなら、それもいいと思います。私が求めているのは、主権者の意思が国家の基本政策に反映されることです。されていないというねじれに、私はたまらなくガマンができないのです。それが、この本を書こうと思ったキッカケであり、15年前からの変わらぬ思いなのです。