江戸の遊びを知り尽くした旦那衆に習い
洒落者の亭主が創り上げた「志ま平」スタイル
この「志ま平」スタイルのベースを創るのに20数年を要したそうだ。その継続して積み重ねた力の源は、島田さんが抱く江戸に対する強い憧れだ。
神社仏閣へ自分の名を木札に書き、納札する「札所めぐり」、正式にはこれを「千社札(せんしゃふだ)」という。埼玉に2度目の店を持ったときに、浅草を中心にした「札の会」に島田さんは入る。
神社仏閣から御朱印をもらい、これを柱や欄干、梁のところに許可を得て貼る。元々は木札や金属札だったが近年は紙札になった。
江戸時代中期に信仰上の理由から流行ったものだったが、職人たちは江戸文字や寄席文字で自分の名や屋号などを書き、現代でいえば絵入りのデザイン名刺のような感覚で、お互いに交換もして楽しんだ。現在の愛好家も江戸市民と同じように納札交換会を催す。
この会に入って島田さんは様々な江戸文化を見習う。メンバーには、江戸前の遊びを知り尽くした旦那衆が多くいた。男の着物はこう斜に着崩す。下駄の履き方は指でつまむ。そして、草履の歩き方、扇子の差し方、帯の締め方などのお手本を見た。それは丸ごと”江戸の洒落者”の生活様式だった。
「遊びもよくして、仕事もしなくちゃいけない。それが江戸職人なんだな」と島田さんは微笑む。