資産を運用するのに大切なのは
「ゴールの設定」と「欲張らない」こと!
ところで、資産を運用するうえで最も重視すべきことは何かということを考えてみましょう。1つめのポイントは、リスク許容度や保有資産額、収入、支出などを把握して、自分自身にとっての本当のゴールを理解することです。
次に重大な損失を招かないこと。まだ年齢の若い投資家のなかには、大胆になり過ぎて失敗してしまうというケースが見られます。しかし、逆に用心し過ぎてせっかくのチャンスを逃してしまうということもありますので、このさじ加減は非常に難しいところです。
3つめは堅い守り。基本的に保有するポートフォリオは、ディフェンシブであるのが理想です。
そして4つめとして「もっと!」という言葉を付けくわえておきましょう。誰もがもっと高いリターンを得たいと考えていますが、こうした欲張りによって払わなければならないコストにも注目して下さい。つまりファンドマネジャーを変更する、マーケットタイミングを図る、あるいは銘柄を変更する、といったことを繰り返しているうちにコストがかさみ、パフォーマンスにとってネガティブな影響を及ぼします。
最後に、ここまでお聞き下さった方の最終的な関心事は、結局のところ、アクティブ運用とパッシブ運用のどちらが良いのか、ということになるかと思います。この点について、私ならパッシブ運用を選択します。
実際に自分の資産を運用しているのもバンガードのインデックスファンドで、グローバルに投資しています。
もし、敢えてアクティブ運用のファンドを選ぶのだとしたら、なぜ自分はアクティブ運用を選ぶのかということについて、慎重に考慮を重ねる必要があります。大方において、アクティブ運用はコストの面でインデックス運用よりも負担が重く、実際のパフォーマンスが市場平均に対してなかなか勝てないというのは、前述した通りです。
小説、ハリー・ポッターに次のようなセリフがあります。
「ハリー・ポッターよ、人の値打ちを決めるのは、どんな能力を持っているのかではなく、どんな選択をしたのかなのだ」。
これは、投資にも当てはまります。市場を理解しようとするのではなく、まず自分自身を理解して、どんな人生を歩みたいのかということを考えて下さい。そのうえで、こうした自分の人生、自分自身に合う資産運用とは何かを考えます。そして、それに適した投資を選べば、勝者になれるはずです。
ご静聴、ありがとうございました。
※この記事は、2011年10月9日、朝日ホールで行なわれた「正しい投資の始め方~『敗者のゲーム』チャールズ・エリス氏を迎えて~」(バンガード・インベストメンツ・ジャパン主催、クレディセゾン、セゾン投信協賛)を取材し、再構成したものです。
国際ビジネス戦略コンサルティング会社であるグリニッジ・アソシエイツの創設者。イェール大学の 後任受託者および投資委員会委員長、ニューヨーク大学スターン・ビジネススクールの監督、フィリ ップス・エクセター・アカデミーの受託者などを歴任。 ホワイトヘッド・インスティチュートの会長 、ロバート・ウッド・ジョンソン財団の財政委員会の受託者兼委員長も務めている。2001年から2009年までバンガードの社外取締役も 務めた。
"Winning the Loser's Game "(McGraw-Hill出版、日本語版:『敗者の ゲーム』日本経済新聞出版社)など著書15冊。またビジネス専門誌にこれまで100近くの論文掲載があ る。代表的な論文“The loser’s game”は1977年に投資専門家部門のグラハム&ドッド賞 を受賞。