運用哲学の古典中の古典として、投資家に読み継がれてきた全米50万部のロングセラー『敗者のゲーム』。その著者で、運用コンサルタントとしてNo.1の実績を誇るチャールズ・エリス氏が、2年ぶりに日本に来日、波乱の時代を生き抜く長期投資の秘訣を語った。10月9日に行われた、基調講演を短くまとめてご紹介する。(取材・文 鈴木雅光)
過去20年間で8割のファンドマネジャーが
ベンチマークに勝てなかった
私の人生を振り返ると、とても幸運だったと思います。適切な女性を妻にすることができ、投資関連の仕事を続けることができました。また仕事については、実にさまざまな形で勉強をする機会にも恵まれました。
そして、そのなかで私は2つの教訓を得ることができました。
ひとつは、共に資産運用について学んできた友人は、全員が豊かな才能に恵まれ、決断力に長けた人たちばかりだということ。
そしてもうひとつが、彼らは本当に優秀ではありますが、なぜか資産運用で高い成績を出すことができなかったということです。つまり、運用のプロを選び、自分の資産を運用してもらう個人にとって最大のハードルは、この運用担当者選びになります。
ところで、この50年間を振り返ってみると、マーケットを取り巻く環境には、大きな変化が現れました。
第一に、投資家の主体が大きく変わったということです。ニューヨーク証券取引所での取引に参加している投資家は、50年前、個人が全体の90%も占めていました。逆に金融機関などの機関投資家は、10%程度だったのです。
今は、その比率が逆転し、個人投資家の比率が10%で、機関投資家は90%にも達しています。
第二に、出来高が大きく増えました。ニューヨーク証券取引所について言えば、50年前の出来高は1日平均150万株だったのが、現在は35億~50億株にもなります。
第三は、デリバティブの存在。今は非常に活発に取引され、想定元本ベースで現物市場を超えているデリバティブですが、50年前には全く存在していませんでした。
こうしたマーケット環境の変化のなかで、非常に不愉快な気持ちにさせるデータも浮上してきました。
それは、運用のプロであるファンドマネジャーの運用成績に関連したもので、どれだけのプロが、ベンチマークを上回るリターンを上げられたのかを示したデータです。
それによると、過去12ヵ月で見た場合、何と全体の60%ものファンドマネジャーが、ベンチマークを超える実績を上げることが出来ませんでした。過去10年だと70%のファンドマネジャーが、過去20年だと80%のファンドマネジャーが、やはりベンチマークを超えるリターンを残すことができなかった、という結果が出ています。