第2に、待機児童数は、保育所の増加に比例して増える「逃げ水」である。これは保育所が満員で仕事を辞めざるを得なかった女性が、利用できるようになれば申し込むためである。世田谷区の調査では、出産で離職を余儀なくされた女性のうち、約3割が保育所の不足を挙げている。今後、保育所の充実とともに、この潜在的な保育需要が顕在化することは避けられない。この「供給が需要を生む」メカニズムは「安心プラン」の試算には含まれない。

 第3に、将来の待機児童数の見通しを過小評価することは、現行の保育制度の抜本的な改革をせずとも、予算措置だけで対応可能という誤った政策判断を導くことになる。これは2000年に福祉から介護サービスへと大転換した高齢者介護と対照的である。保育の世界は、「(家族による)保育に欠ける」例外的な児童のための福祉制度のままであり、これが働く女性が当たり前となった労働市場との矛盾が拡大している。わずか数万人の「待機児童」という部分的な事象ではなく、義務教育前の子ども(600万人)を対象とした潜在的保育需要に対応する、民間主体の「保育サービス市場」の育成を、本来の政策目的とする必要がある。

「応益負担」ではなく「応能負担」
児童福祉法に基づく保育所の限界

 現行の認可保育所は、母子世帯等、家族による子育てが可能でない「保育に欠ける」子どもを保育所に収容する児童福祉制度に基づいており、無料ないし低額の利用者負担が徴収される。このため、働く女性の増加とともに、保育コストに比べて利用料が極端に低いことから「超過需要」が生じている。とくに0歳児と1~2歳児の費用は、国の基準では各々月額14.9万円と8.8万円となっているが、現実には自治体により大きな差が生じている。

 例えば東京都某区の認可保育所の運営経費は、0歳児41万円、1歳児30万円、2歳児18万円と高コストとなっている。それにもかかわらず、児童福祉の建て前から、その使用料は保育コストとは無関係に、利用者の所得のみに応じて決まる「応能負担」である。この結果、3歳児未満の平均利用料は、年収1000万円以上の高所得層でも5.7万円に過ぎない(「東京都における保育の状況[2013年]」)。