「読み手は何も知らない」
という前提に立っているか?

「何も知らない人」を前提にしているかどうか、ということです。

象徴的な経験をすることになったのは、フリーランスになって数年後のことでした。

テクノロジー関連の求人広告や記事も書いていたこともあって、一流の科学者へのインタビュー連載を書くことになりました。Tech総研の「我ら“クレイジー☆エンジニア”主義!」という連載です。これは今もWeb上に掲載されていますが、当時は、驚くほどのアクセスが集まる人気連載になりました。

山海嘉之さん(サイバーダイン社長)、石黒浩さん(大阪大学教授)、石井裕さん(MIT教授)などなど、最先端の科学領域で突き抜けた研究をしている人たちばかりを取材しました。

当時、彼らの研究についてわかりやすく書いた記事がほとんどありませんでした。取材に行く前の資料探しでとても苦労した経験から、よく覚えています。しかも私は超文系です。科学に詳しいわけでもなかった。

なぜ、そんな私が書いた科学者のインタビュー記事が、読者に支持されたのか。まず、インタビューでは私は徹底的に「申し訳ありません。文系でして、よくわかっておりません」という姿勢を貫きました。実際、よくわかっていませんでしたし、理解できる資料も少なかった。とにかくゼロから教えてもらおうとしたのです。

そして私は、「読者も知らないことだらけのはずだ」という仮説を持っていました。

Tech総研の読者は、理系の人がほとんどを占めていましたが、私は、それまでのたくさんの研究者へのインタビューを通じて、「理系」とひと口にまとめてはいけないと感じていました。学科が異なると、まるで知識レベルは異なるのです。電気系の人は電気の話には詳しいけれど、機械の話には詳しくない。物理の人は物理の話には詳しいけれど、生物には詳しくない。そういうケースが、とても多かった。

だから、「ほとんど何も知らない」というレベルの人が読むことを前提に、やさしく書いていく記事にしたのです。これが、支持を得られた理由の大きな要因だったと思います。

もう1つ、文章を書く上で気をつけていることがあります。