細川・河野両氏がいま、
現行選挙制度導入を悔いている理由

 細川護煕元首相と河野洋平元衆議院議長が対談し、初めて1994年1月の政治改革法に関する2人の合意をテーマにして語った。(10月8日朝日新聞)

 全国区比例250、小選挙区250とする政府提出の衆議院の選挙制度改革案は、93年11月に衆議院で可決されたものの、翌年1月に参議院で否決されて暗礁に乗り上げ、細川、河野(当時自民党総裁)両氏のトップ会談で自民党案を丸呑みして修正合意。ブロック比例200、小選挙区300の現行制度が決まった。

 今回の対談で河野氏は、この制度が「政治劣化の一因」となったとし、率直に「忸怩たる思い」を述べた。

 一方、細川氏も「小選挙区に偏り過ぎた」ことを悔いてこの制度の失敗を認めた。

 河野氏の現行制度に対する評価は、既にメディアでも伝えられてきたが、細川氏がそれを公然と語るのは初めてだ。

 現行制度をトップ会談で決めた2人の発言だけに格別の重みがある。

 細川氏は10年以上前から私には、この制度が失敗だという認識を示してきた。ただ、この制度導入の最高責任者であるだけに失敗を認めることには大変な男気が要る。公然と反省するのは政権交代の成果をみてからということだったのだろう。だが、せっかく実現した政権交代後の政治があまりに劣悪だったためについに発言する気になったのではないか。

 この対談での2人の共通認識は、小選挙区制がそれほど良質な人材を生まなかったこと、少数の貴重な意見が排除される流れとなったことだろう。

 しかし、現在の民主党や自民党の現行制度の改革論は、「議員定数の削減」を大義として比例区の大幅な削減という逆の方向に走ろうとしている。これでは今まで以上に政治の劣化を加速させることになってしまう。政治家エゴ、政党エゴがここに極まったというべきだろう。

なぜ現行制度はかくも政治を劣化させたか
現職・既成政党優先主義が招いた弊害

 私は、93年以前は、細川氏と同じように「中選挙区連記制」を支持していた。93年の細川政権樹立に際して、政府案となった前述の「小選挙区と全国比例代表の並立制」に妥協したのである。

 それは、全国区比例250の中に少数政党の居場所を確保し、また有力な国家的視野を持つ人材の登場が期待できると信じたからであった。