【欠点3】思いやりが「言葉だけ」で行動がともなっていない

 当然、研修の成果はあがらなかった。たしかに社員同士は絆を強めることができたし、有益なコミュニケーションのスキルを習得することもできた。

 だが研修終了後におこなったアンケートには、「そもそも、なぜチームリーダーが席を空けていたのか?」といった疑問が数多く書き込まれていた。

 リズが研修に集中しなかったせいで、「こんどのリーダーはチームのことを本気で考えていない」という印象を強めてしまったのだ。その日の研修でチームは、リーダーへの不信感をつのらせたのである。

 企業幹部のご多分にもれず、リズも多忙をきわめている。だが、忙しそうにしているだけでは、部下に「あなたたちのことを心から気にかけている」という印象を与えることはできない。そうした印象をもってもらうには、心身とも「いまここ」にいることが肝要となる。リズは、チームメンバーに「私はあなたたちのことを最優先に考えています」と言っていたが、行動でその言葉を裏切った

 研修のあと、ある参加者から私のもとにメールが届いた。そこには、元国務長官ルイス・カスの「発言を疑われても、行動で示せばかならず信じてもらえる」という言葉が引用されていた。

 この名言は真実をついている。行動は言葉より多くのことを物語る。

 あなたはこの事実を有効活用したほうがいい。そのほうが、リーダーシップ研修によってほかのスキルの習得に投資するよりもはるかに大きな見返りを期待できる。

 事実、心理学者ダニエル・ゴールマンがリーダーシップに関する調査を実施したところ、すぐれた管理能力を発揮するには、対人関係の能力が、知能(IQ)や技術的熟練度の2倍、重要であることがわかった。