米を食べて育った鶏、”こめたま”の出汁巻き玉子
その白い姿と何ともいえない甘みに驚かされる

 人気の媛っこ地鶏のもも焼きは土佐の備長炭を使って焼き上げる。美味い焼き鳥は炎と煙のなせる業だ。だから、炭も備長炭にこだわる。備長炭もどきやガスは一切使わないという。

 備長炭が発する強い炎にぱっと当てる。身から落ちた脂で煙が立ち込める。その煙が身の表面にちょうど燻したような旨みを与えてくれる。それが鶏焼きの基本で、それ以下ではせっかくの地鶏のよさが死んでしまうという。

 かつて焼き鳥屋で積み重ねた吉田さんの手さばきを見ながら、日本酒をやるのも楽しいものだ。もも焼きは表面がカラリとしていて、噛むとジューシーな肉汁が口中に広がる。この味わいの深さに感応してしまうのは、日本人の身体にしみこんだ焼き鳥好きのDNAのせいなのかもしれない。

(写真左)こめたまの出汁巻き玉子。米を主食にした養鶏で黄味自体が白色で甘味も強い(写真は1人前の半分)。(写真右)鶏皮ざく。鶏皮を野菜で合えたあっさりした一品・捌き鶏を丸ごと仕入れるから多彩な鶏料理を揃えている。

 「大愚」のもうひとつの目玉商品は“こめたま”の出汁巻き玉子だ。鶏の成育に米を中心とした餌を与える。当然、それは養鶏にはコスト高になるが、その効果は玉子本体に特別な滋養と甘みを与えてくれる。色もほぼ白に近くて、仕上がったときにはその姿に驚く。これもぜひオーダーしてもらい一品だ。

少数生産のレアな無濾過生原酒がズラリ
聞くだけですごい日本酒のラインナップ

 日本酒のラインナップは聞くだけですごい。すべて無濾過生原酒※2だ。

無類の酒好きの亭主が揃えたのは無濾過生原酒。蔵出しが限定されたものばかりだ。亭主おすすめのセレクトで極上の酔いとなる。

「料理に相性の良い酒をと選んでいったらこの酒になりました。これも長年の居酒屋通いの学習効果です。酒好きの方がこられると、その酒はあの酒問屋から仕入れたな、そんな話で盛り上がります。」

 と、吉田さんは笑いながらこともなげに言うが、それだけ貴重で小本数しか製造しないものばかりを揃えてあるのだ。

 祖母が無類の酒好きだったそうで、小学生の頃から祖母にお酌をさせられていた。長じて自分も日本酒に走ったのは仕方ないのだという。

※2 無濾過生原酒:一般的には日本酒の完成までは濾過や火入れを2回繰り返すが、この行程を省いたものが無濾過生原酒である。したがって蔵出し本数も限定されている。条件としては保管や冷蔵の管理が必要とされる。色も黄色がかったものや自然の色合いがあり、繊細で旨みのある味わいがあると評価されている。