カウンターの7席だけの店だからできる手挽き蕎麦
その食感、香り、甘みが口中に溢れ出す

 吉田さんが新小岩で6年前まで営んでいた蕎麦屋は電動石臼を使っていたが「大愚」では手挽き石臼にした。元々、電動石臼でもいろいろと挽き方を変えて粉を取っているうちに、自分が求めている粉が手挽き石臼の粉に近づいて行ったことに気が付いたからだ。

 手挽きは当然、手間も時間もかかるが、カウンター7席だけの店だから手挽き蕎麦で少数のお客を丁寧にもてなすことができるという。

(写真左)殻を剥いた丸抜きのせいろ。香り出しを意識した中細の仕上げ。腰もしなやかで手挽き臼が手に馴染んできたという。(写真右)黒殻が付いた玄蕎麦を挽き込んだ田舎。せいろと対照的に太く、腰も強い。もちもちした食感をくれる。

「毎日、2時間は手挽き臼を回します。でも、それが楽しくて仕方がないんです。」

 こう話しながら、手挽き臼からこぼれ落ちてくる粉を愛しそうに手でそっと握る吉田さん。握った粉の感触でその日のでき具合を確認し、その手触りからつなぎの量を決めていくそうだ。十割で打つ時もあれば、小麦を蕎麦の全体量の5%くらいにする場合もある。

 手挽きで打ちあがったせいろは麺体に複雑なざらつきがあり、口に含んだときに微妙な食感がある。田舎は玄の黒殻を挽き込んであり、黒光りしながら、その黒殻の粒子が全体に散らばっている。香りがふわりと漂い、噛みしだくと甘みが口中に溢れた。

 美味い地鶏と出色の手挽き蕎麦。こんな蕎麦屋があったならと、ビジネスマンなら待ち望んでいただろう。その快い接待を彼に教えてあげよう。新橋の夜、「大愚」は「大賢」に通じるを味わってみようか。

「大愚」
●営業案内
・住所 東京都港区西新橋1-19-10 新橋HSビル1F
・電話 03-3597-0395(FAX共)
・営業時間 11:30~14:00(売り切れ仕舞い) 18:00~22:00 定休・日、祝、土夜 (夜は酒を飲まない方の入店不可)
●予算:3000~5000円
●HP なし
●おすすめ:鶏の昆布〆(780円)や鶏皮ざく(500円)は日本酒に当てたい。締めの蕎麦はせいろも田舎(ともに840円)のどちらもいただきたい。料理、蕎麦ともに比較的安価。どこかで呑んだ2軒目にもいい。
●酒・料理:こめたまの出汁巻き玉子(700円)は是非物、手羽先コンフィは蕎麦屋には珍しい肴で2本セットの限定品(680円)。2人以上の会食なら6品が付くお任せの3500円コース(蕎麦付き)がお得。無濾過生原酒は亭主のセレクトで3銘柄はトライしてみたい。
訪問:22時まで営業なので、遅い時間の会食や接待にも重宝する。
●地図こちら

  

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