平井 少し前に、10年前といまの企業の時価総額トップ100を比較したことがあるんですが、特に一定以上の上昇を見せた企業のトップ10で見ると、その大半がオーナー系企業であるということがわかったんです。おれがやりたいから、やるべきだと思うからやるんだ、という思い切った意思決定ができることは大事ですね。

オーナー企業の
トップコミットメントの強み

岡島 好奇心があって自分でやるか、わからないならデジタル・ネイティブに任せるかのどちらかしかないんです。いずれにせよ、内部変革にはトップコミットメントが不可欠ですね。

 私が社外取締役をしている丸井グループでは社長の青井浩さんがトップコミットメントを発揮して、変革を加速しています。フィンテックやシェアリング・モデルなど、いろいろなベンチャーにも投資しています。本業ではオムニチャネルの展開で「ラクチンきれいシューズ」という長時間履いていても疲れないパンプスの販売数が300万足を超えました。オムニチャンネルで300万足売り上げるなんて、私などの感覚ではやってみる前には想像できないことでしたが、それを若手社員にやらせたんですね。

 靴を買う際、色やサイズや似たタイプの靴を試そうとしても在庫が全部そろっていることは少ないし、ストックから持ってきてもらうのを待つのも、忙しいときには相当イライラするものです。そこでマルイでは、静岡を始めとする数店舗では在庫は置かず、全種類のサイズ、色、タイプのサンプルを揃えて自由に試せるようにしたんです。気に入ったものはその場でタブレットで注文でき、後日お客様のご自宅へ発送されるというしくみです。

平井陽一朗

平井 店舗がショールームになるということですね。

岡島 ええ。これは20代、30代にプランニングを任せてできたことなんです。彼らはユーザーが欲しているサービスをテクノロジーによって実現するビジネス・モデルを考えることができる。ただ、ベテラン社員には、試着のときお客様の足を見ただけで「お客様の足の形ですと、この木型のほうが合いますよ」と即座に提案できる人が多い。プランニングはできなくてもエグゼキューションはベテラン社員の経験値が勝るわけです。

 ほかの会社だとプランニングは上流で、エグゼキューションが下流という固定観念があり、職位の問題でうまくいかないことが多いのですが、青井さんは、プランニングやエグゼキューションはヒエラルキーではなく役割分担だとずっと現場で言い続けてきた。加えてマルイには、「顧客共創」という独自の文化があって「お客様のためになるなら上流か下流かなど関係ない。職位なんてかまわない」と考える社員が集まっている。それで成功したんですね。