「思いがけず情報システム部門に配属された」
「本業でいっぱいいっぱいなのに新規プロジェクトにアサインされ、膨大な時間とられてうんざり」
「専門用語もITのしくみも、正直、意味不明」

企業がITビジネスをどんどん広げていく傾向にある中、そんな悩みを抱える人が増えているようです。

そこで、かつてない「システム発注者のための入門書」として注目を集め、発売早々連続増版を重ねる『システムを「外注」するときに読む本』の著者が、「知識ゼロ」からでも、自社に貢献するIT企画や要件定義ができて、失敗率の高いIT導入を無事成功させることができる、実践的な知識とスキルをお伝えしていきます。

システム担当者は
「あまのじゃく」になれ

前回の記事【地雷だらけ】“要件定義”とはそもそも何をすることか?【5分で理解】(https://diamond.jp/articles/-/145790)では、システムを導入する上で最初に行なう「業務要件定義」についてお話ししました。

簡単に前回の趣旨をおさらいすると、「システムにどんな機能を持たせるか?」を考える前に、まず、対象となる業務を「業務フロー図」で可視化し、「現状の業務フローのどこを変えれば会社や組織、部門が良くなるのか?」を考えた上で、個々の業務への入力情報と、行うべき処理、そしてアウトプットを考えるという作業でした。

システムを導入するにあたって、この業務要件の整理は、発注者側が主導権を握らなければなりません。ITベンダーは、たとえ同じ業種の別会社のシステム化経験が豊富にあったとしても、どんなにシステムに詳しかったとしても、結局は「社外の人間」ですから、リアルな業務要件を定義するには限界があります。

また、導入したシステムが、最終的に業務に役立って売上拡大やコスト削減の効果をもたらしてくれるかどうかは、この業務要件にかかっています。ですから、ひるがえって、業務要件をうまく作れる人というのは、企業や組織にとって非常に大切な人材です。ITシステムは、入れ方ひとつで数千万、数億の利益を生むこともあれば、同じだけの損失をもたらすこともあります。そんな大事を安心して任せられる人間というのは、非常に価値の高い人間なのです。

さて、本題に入りましょう。業務要件ができたら、さっそく、それを実現するシステムの具体的な要件の検討に移りたいところです。……でも、その前にちょっとやっていただきたいことがあります。いったん自分が「業務改善反対派」になり、否定的な目で新しい業務フローや要件を見直すことです。
いわゆる「ネガティブチェック」です。

新しいことを始めれば、良い効果もあれば、必ず逆効果もあります。新しい業務を入れることによるマイナス面をきちんと捉え、それでも業務改善をする価値があるのか、最悪の場合に何が起こるのかを検討しておくことが非常に大切です。

次の業務フローをご覧ください。

“ひねくれ者”がシステム担当者に向いている【新業務のネガティブチェックリスト】

これは、従来の業務を、下記のように改善することを目的としたプロジェクトです。

【これまでの業務フロー】
営業部門がお客さんからの引合をメールや電話で受け取る

生産管理部門には納期検討を依頼。技術部門には仕様検討を依頼。

出来上がった見積をメールで返す

【新業務フロー】
お客さんにWEBから引合情報を入力してもらう

それを直接生産部門や技術部門が受け取って見積を行なう

つまり、費用や納期の回答時間を短縮する狙いを持った業務改善の様子を描いています。このように改善することで、お客さんは24時間、見積着手までの時間が短縮できますし、間に営業部門が介在しないことで、伝言ゲームによる情報の間違いも防止することができます。

“ひねくれ者”がシステム担当者に向いている【新業務のネガティブチェックリスト】できるシステム担当者は、ここから「あまのじゃく」になる

さて、そこで「この新業務フローを、“反対派が見たらどんなことを言うか?」を考えるのです。