漆の主成分であるウルシオール

 東京理科大学 鈴木智順研究室での培養と遺伝子解析によって、装飾を黒く変色させている可能性の高い真菌種が確認できてきました。

 今後は、これらの培養株に光触媒を作用させて、効果的なカビ防止法を見出していくことができればと思います。

 日本中の神社に関係した方のお話を伺ったことがありますが、全国の神社などでもカビ問題は深刻のようです。

 光触媒による文化財の保護を実現するには、漆塗りを施した木材の表面に、さらに光触媒をコーティングする技術を確立する必要があります。

 漆は、ウルシオールを主成分とする天然の樹脂塗料で、密着性が高く、耐水性にすぐれ、酸やアルカリにも強いことなどから、古くから塗料として用いられてきました。

 ちなみに、漆の主成分であるウルシオールの化学構造は、1918年、日本の有機化学の父といわれる眞島利行博士によって世界で初めて同定されました。

 日本化学会では、ウルシオールの構造決定の最終段階で用いられたオゾン発生器などを化学遺産に認定しています。