こうした経験を経て監督になっているから、ドラフト1位だからという理由だけでポジションを与えるようなことはしない。逆に、ドラフト6位だから、ファームから下積みをさせようとも思わない。目をギラつかせ、「俺はこの世界で絶対に一流になるんだ」という若手を見つければ、彼らの自己成長をサポートしてやろうと考えるだけである。

 こちらからは教えないし、育てようともしない。

 ただ、私に突っかかってくるのなら、いくらでも相手になる。昔の職人の世界なのかもしれないが、時代が移り変わっても、それがプロフェッショナルというものなのだと思っている。そして、ファームでもがいている若手には、彼らの気持ちを察しながら課題を示す。チームを背負って戦う選手には、気持ちよくプレーできる環境を整える。それをある程度までできたことが、チームの成績として反映したのではないだろうか。

 ビジネスの世界にも、一流大学から大手企業に進んだエリートもいれば、コツコツと下積みから這い上がった人もいるだろう。さまざまな歩みをしてきた人がさまざまな思いを抱えているだけに、少しでも「できる人の思い」「できない人の気持ち」、両方を理解できるリーダーになってもらいたい。


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