2、3ヵ月でもう嫌だ!
そのまま半年ぐらい投げてしまうの繰り返し
「まずはテープを電車の中で聞いていました。それと、文法の本を読む。でもね、2、3ヵ月、ずっとヘッドフォンを耳に入れていると、通勤中にもうカァーッとなるんですよ(笑)。わかんないから(笑)。もう嫌だ、やりたくない、と。外したヘッドフォンを、家に帰ると自宅の部屋のクローゼットの奥に叩き付けてしまったりして(笑)。そうすると、投げつけたままでね。半年くらい、まったくできなくなっちゃうわけです」
しかし、やっぱりまずいよな、と思い直して、またテープを聞き始める。ところが、3ヵ月も経つと、またカァーッとなる。
「もうやってられるかあってな具合で(笑)。これをもう何年も何年も繰り返しましたね。お金を払って、時間もかけて、英会話学校に行く方法もあったのかもしれませんが、時間的にも、その余裕はなくて。だからテープくらいしか方法が思いつかなかった」
それでも本社の外国人幹部とコミュニケーションを交わす機会もあり、悔しい思いをすることになる。これが原動力になって、やがてブランクの期間は次第に短くなっていく。
「言いたいことが言えない。これでは、議論もできないのか、日本人はダメだと思われるんじゃないか、と思って。そういう機会のたびに悔しい思いをするわけです。これはやっぱりなんとかしないといけない、と。ただ、勉強の仕方もよくわからなかったんですよね」
転機は39歳、ニューヨークでの半年間の研修の前に2ヵ月間、ジョージタウン大学で語学トレーニングを受けたこと。世界から来ていた若い学生たちの英語は、訛りもひどいものだった。しかし、それでもコミュニケーションになっているのである。
「思ったんですよ。例えばTOEICで満点なら、それで英語はパーフェクトなのか、と。それはキレイな英語を聞き取れます、というだけの話。なんだ、英語はずっと勉強し続けないといけないものなのか、と」