東はちらしずし
西はばらずしやまぜずし

 冒頭の「ちらしずし・ばらずし」はこんなふうに始まる。

“さまざまな具を混ぜたすし飯の上に具を飾るすしを、主に東ではちらしずし、西ではばらずしや混ぜずしと呼びます。”

 トップバッターは、表紙にもなっている岡山のばらずしだ。江戸時代に、宴席の食事を一汁一菜に制限した藩主の倹約令に対して、町民がすし飯の中に具を隠して混ぜたとか、たくさん具が載っていても「一菜です」と言い張ったとか。いまでも宴席のための岡山の代表選手だそうだ。具は、季節によって鰆や穴子、藻貝(赤貝)を入れることも。岡山の結婚式に一度招かれてみたい。

 ちなみに、私が食べてみたいと思ったベスト3を発表しておく。

 3位愛知県の「箱ずし」(メジロ)。愛知県中部の米作りの盛んな西三河、海に近い土地ではメジロと呼ばれる、味がよく贅沢な穴子の小さいものを具にして、祭りのときに箱ずしにするそう。メジロと、魚種のそぼろ、卵が幾何学模様のごとくに、美しい箱の中の宇宙にちりばめられる。箱ずしの型は家紋入りのものが伝わるそうだ。

 2位は、高知県の「魚の姿ずし」。土佐には独特なすし文化があるそうだが、この鯖の姿ずしは、宴会(「おきゃく」と呼ぶそうだ)の皿鉢料理の必須アイテムとか。頭から尾まですし飯でぎっしりなれど、頭と尾はピンと立てる。脂ののった冬のゴマ鯖に塩とゆず酢がきいている。村の料理上手が中心となり、農作業を行う結(ゆい)の単位でつくってきたそうだ。

 栄えある(のか知らないけれど)1位は、どこどこどこどこどこどこ……(太鼓の音)。富山県の「みょうがずし」!富山市の山側はおいしいみょうががとれるそうで、庭先のみょうがと、傍を流れる熊野川のマスで、熱々のご飯にこの具をまぜこんで食べるそう。冷めたら押しずしにしておすそ分け。ないしは、明日自分で食べる。みょうが好きとしては見逃せないすしだ。

 とまあ、挙げればきりがない。

 巻末には、読み方案内と称して「すし」をあれこれ比較したり、「調理科学の目」と題して、すしの多様な地域性や、すし飯の好みで見えてくる地方性について触れているのでこちらを先に読んでもよいかもしれない。