「カバン持ち」が、最高のリーダー教育である
そんなにたいへんだったら、人員を増強すればいいのでは?
そんな質問が飛んできそうですね。あるいは、経営企画部などの専門部署が、その役割を担えばいいのではないか、と考える向きもあるでしょう。
しかし、それは正しい判断ではありません。
大人数がかかわる買収案件だからこそ、司令塔は機敏に動くコンパクトなものでなければ、「船頭多くして船山に登る」という結果になりかねません。司令塔は、あらゆる意思決定ができる社長に限定すべきなのです。となると、司令塔である社長の意思決定をサポートする直属の部下も、すべての案件を頭に入れておかなければ適切なアシスタントにはなれません。いわば、社長と脳を「同期」させておかなければならないのです。
だから、当時の私のような役割はひとりの人間が受け持つのがベスト。複数人で対処すればスタッフの負担は減るでしょうが、アシスタントのなかに全体の整合性を考える人間がいなければ、社長の正しい意思決定に貢献することができないという結果を招くからです。
言い方を換えれば、社長直属のスタッフには業務負担は重くのしかかりますが、家入さんからマンツーマンでリーダーシップ教育を受けているようなもの。いわば「カバン持ち」のようなものですが、これに勝るリーダーシップ教育はないと言っても過言ではないのです。