2度のバブルで失敗を経験した大京。教訓を生かし、在庫縮小とマンション管理や修繕で稼ぐ体制に転換して、不動産市況に左右されない企業に変身しつつある。
マンション専業最大手の大京は2012年3月期の営業利益予想額を、従来の136億円から214億円へ上方修正した。
東日本大震災の影響でマンション業界は全体として低調が続くなか、同社が高業績を上げる背景には、「過去の痛い失敗からの教訓でリスク管理を徹底するようになった」(岡田洋一・大京財務担当執行役員)ことがある。リスク管理とは、マンション在庫を適正に保つことだ。
大京は、かつて「販売数」を看板にしたディベロッパーだった。年間1万戸以上を販売し、1978年から28年連続でマンション販売数1位を記録している。だが、その勲章を得るための代償も大きかった。バブル期に過剰投資した資産が不良化して、倒産寸前まで追い込まれたのだ。
転機は04年。産業再生機構の主導で金融支援が実施され、オリックスから出資と経営者を受け入れ再スタートを図った。
バブル期の反省から、再建の第一歩は「販売数の追求」をやめることだった。同時に用地取得から引き渡しまでの期間を、平均3年から2年に短縮して、資産効率を上げる目標を立てた。
数の追求からの脱却は順調に進み、ピーク時には1万戸を超えていた年間販売数は右肩下がりとなっていった(図②)。
しかし、2000年代中盤、「ミニバブル」と呼ばれたマンション市場の活況が訪れる。大京もミニバブルに乗り遅れまいと再び積極的な用地取得に動き始めた。
ミニバブルに乗じて06~08年は300億円台の営業利益を稼ぎ「大京は復活した」と見られていた。だが、08年秋のリーマンショックで市況が悪化した途端に大量の売れ残り=不良在庫を抱えることになった。09年は434億円の棚卸資産評価損が響き、440億円の営業赤字を計上した。
「市況変動の恐ろしさを再認識した」(岡田氏)。株価は09年3月には「倒産株価」といわれる37円まで下落してしまい、オリックスに追加出資を仰ぎ再々スタートを切ることになる。
大京は販売数こそ減らしていたが、ミニバブルで在庫管理が甘くなっていた。それは売上原価と棚卸資産(マンション在庫)の比率を示す棚卸資産回転率(=売上原価÷棚卸資産。図①)に表れている。棚卸資産回転率は数値が大きいほど仕入れから販売までの期間が短く、在庫水準が効率的とされている。