仕事でも何でも「迷ったら人の考えを聞いたほうがいい」とはよく言われる。どんな人でも自分だけで考えていると、つい客観的な視点を失い、独りよがりになってしまうからだ。しかし、コロンビア大学ビジネススクールで、人生の歩み方から働き方、日々の意思決定に至るまでの最も合理的な思考法を教える授業で高い人気を博しているウィリアム・ダガンは「人のアドバイスは聞き方によってはむしろ害になる」という。世界のトップエリートがこぞって聴講するこの人気授業のエッセンスを凝縮した話題の書『超、思考法』から、その驚くべき理由を説いた内容を特別公開する。

人には情熱をもっている相手を否定したくなる性質がある

 自分だけがひらめいた独創的なアイデアを実現させるためには「決意」がいるものだ。ひらめきは一瞬だが、それを実現するには、数日から数ヵ月、長ければ数年もかかる。そのために必要なのが固い決意だ。ひらめきが強いほど、決意も強くなる

 ひらめきによって得られるものはアイデアだけではない。ひらめきは、情熱をもたらす。アイデアがプライベートに関するものなら家族や友人、仕事に関するものなら上司や同僚など、その実現のためには他者の協力が必要になることが多い。だからたいてい「決意」の最初のステップは、他人にアイデアを伝えることになる。

 しかし、ここで悩ましい問題に直面する。情熱を隠したほうがいい場合があるのだ。理性と情熱は相反するものだと考えている人は少なくなく、理路整然としたアイデアなら受け入れるが、話し手が情熱に突き動かされているように感じられると、そのアイデアに対して警戒することがある。もちろん、情熱と理性が共存することを理解してくれる人もいる。だがまずは慎重に、どうアイデアを伝えればよいかを戦略的に考えよう。

普通に「意見」を聞いてしまうと「批判」が返ってくる

 誰もがあなたと同じようなオープンマインドを持っているとは限らない。相手は、新しいアイデアを受け入れないかもしれない。

 だから、まずはアイデアを要素に分解して、1つずつ順番に伝えよう。そうすることで、相手はアイデアを理解しやすくなる。ただし、だからといって相手がそのアイデアを支持してくれるという保証はない。

 効果的なのは、相手によって伝え方を変えることだ。数字を好む相手には具体的な数字を示し、形式を重視する相手にはきちんとした企画書をつくって説得し、周りの意見を気にする相手には外堀を埋めてからアタックする。その相手にふさわしい方法で、一人ずつアイデアを伝えていくのだ。

 反応が薄い相手には、ゆっくりと段階を踏んでいこう。まずは、日々の会話のなかで、アイデアの各材料を話題にしていくことから始める。今日はこのテーマ、明日はこのテーマ、という感じだ。そうすることで、相手をアイデアの材料に慣れさせる。そして最後に、それらの材料を結びつける、あなたの斬新なアイデアを伝えるのだ。

 その場では、相手に意見を求めないように気をつけよう

「このアイデアをどう思いますか?」「このアイデアはうまくいくと思いますか?」と質問すれば、たいていの相手は批判的な意見を返してくる

 新しいアイデアはたいてい、相手のそれまでの経験と一致しない。だから相手は反射的に直感を働かせて、新しいアイデアを拒否しようとする。この「そんなアイデアはうまくいくはずがない」という拒絶反応を避けるには、いきなりアイデア全体を伝えるのではなく、まずは小さなパーツに分解して、ひとつひとつ伝えていくことが効果的だ。