最新の知識を学び直す
教育休業制度の創設を

 賃金を高めるための基本は労働生産性の上昇である。従来の製造業中心の産業構造では、生産性向上の施策は企業内教育が中心でよかった。しかし、専門的なサービス業が主体の経済で、急速に進む情報化社会に対応するためには、企業の外部でのリカレント教育(生涯を通じた学び直し)が不可欠となる。

 政府もこれを後押しするために、雇用保険を活用した教育費の補助事業を設けているが、勤務時間の外で質の高い教育・訓練を受けるには不十分である。

 むしろ労働者が一時的に職場を離れて最新の知識を学び、一定の専門的な資格を目指す仕組みが重要である。これを促すためには、企業が無給の「教育休業制度」を設け、政府も現行の育児・介護休業と同様に、雇用保険から失業給付に相当する「教育給付」を行うことが望ましい。現に、ビジネススクール等の専門職大学院へのニーズは増えており、これをさらに促進する必要がある。 

 また、傾向的に減少する貴重な労働者を十分に活用するためには、高生産性分野への円滑な移動が不可欠である。雇用の流動化を促す制度改革には「解雇の容易化」という批判がともなう場合が多い。しかし、労働者が長期的に減少する、今後の日本の労働市場では、雇用流動化は、労働条件の悪い企業からの脱出を容易にし、労働者にとって企業を選択する自由度の高まりを意味する。

 崩れつつある年功賃金に依存した春闘賃上げ率ではなく、リカレント教育投資による労働生産性の上昇を通じた賃金増加を本来の政策目標とする必要がある。

(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 八代尚宏)